第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

2024年11月3日(日) 14:50 〜 15:20 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-120-C] 服薬管理困難な認知症患者宅を薬剤師が訪問支援した症例

小坂 智子, 田中 利樹, 今野 圭子 ((株)アイセイ薬局 アイセイ薬局稲毛海岸店)

【目的】
認知症の進行に伴い通院や処方薬の管理が困難となった患者に対し、訪問支援した症例について報告する。
【事例】
患者は70代女性(以下「妻」と表記)。X-5年より認知症治療を開始しており、長年独力で通院を続けてきた。X-1年に、頻繁に薬局へ「薬をなくした」との問い合わせを行う、必要時に受診をすることができない、他者との交流を拒否する、といった問題が顕在化した。そのため、処方薬管理に懸念を感じた弊薬局は、地域包括支援センターへ相談を行った。しかし、介護支援専門員による生活支援は患者家族より断られてしまった。一方で理由は不明ながら薬剤師の訪問だけは受け入れられたため、断続的に患者宅を訪問し服薬支援を行った。
X年7月に患者宅を訪問した折、夫(70代男性、糖尿病にて通院中。以下「夫」と表記)と接触し、妻の抱える問題点や支援の必要性について話し合うことができた。同年10月、再度の訪問時に、夫が顕著な下腿浮腫で自立歩行が困難な上、服薬管理が不十分である等、問題を抱えており早急に支援が必要な状態であることに気付いた。別居の娘にも接触し、夫と娘の同意を得て再度介護支援専門員に連絡を取り、夫婦ともに介護認定申請を行った。これを機に妻の処方変更がなされ、近所のワークハウススタッフが声掛けを実施するようになり、さらには娘が通院に同行するなど周囲の環境変化につながった。
【考察】
本症例は、断続的な訪問により患者および家族の信用を獲得し、結果さらなる問題の発見および対処につながったと考えられる事例である。このような高齢者のみの世帯で福祉支援を必要とするケースは他にも多数存在していると考えられ、今後も高齢者に対しては、必要に応じて訪問支援による問題点の洗い出しと対処の検討を行う必要があると考える。