[P-122-B] ヘルスケアパスポート®活用により乳がん術後薬物療法患者の発熱性好中球減少症の重症化回避に繋がった一例
【背景】近年、患者報告アウトカム電子システム(electronic Patient Reported Outcome : ePRO)を用いた有害事象(以下、AE)モニタリングにより、患者QOLの向上や重篤なAEの早期発見に有効であった事が報告されている。今回、当薬局では、パーソナル・ヘルス・レコードの一つであるヘルスケアパスポート®(以下、HCP)を用いて、抗がん剤治療中患者を対象にAEモニタリングを実施している。HCPは、本人が記録した情報を医療機関と共有でき、施設間連絡機能も搭載されたプラットフォームである。患者は体調等を入力し、当薬局薬剤師は、AEモニタリング等に活用している。今回、乳がん患者においてHCPを用いて、発熱性好中球減少症(以下、FN)の重症化回避に繋がった1例を報告する。【症例の介入及び経過】40代、女性、左乳がん、Stage 3Cに対して、術後薬物療法としてTC療法(ドセタキセル+シクロフォスファミド)を施行した。FN対策としてペグフィルグラスチムの併用とレボフロキサシンの処方があった。1コース目は重篤なAE発現はなかった。2コース目よりHCPを用いてモニタリングを実施した。Day 8、電話フォローアップにて、頭皮に強いそう痒感が発現し皮膚科を受診し、セファクロルを服用中であることを聴取した。さらに、体温37.7℃であり、体調変化の確認、感染症の予防対策の継続を指導した。Day 9、38.1℃とHCPで確認し、電話でレボフロキサシンは服用していないと聴取した。病院薬剤師と相談し、患者へレボフロキサシン服用開始を指導し、その後解熱しFN重症化を回避できた。【考察】FNの自覚症状として発熱の発現があり、重篤例では致死的になることもあるので、HCPによるモニタリングの有用性が示唆された。また、HCPの施設間連絡機能を利用することで病院との連携がしやすくなり、AEの把握が可能となり、QOL向上や安心感に繋がる可能性が考えられる。