第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Aグループ

2024年11月3日(日) 13:00 〜 13:40 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-133-A] 医薬品副作用データベース(JADER)を用いた薬剤性ファンコニー症候群発現状況の解析

富田 雅之1, 岸田 充生2 (1.(株)フロンティア フロンティア薬局 麻溝台店, 2.(株)フロンティア 南関東支店)

【目的】ファンコニー症候群(FS)は、近位尿細管の広範な機能障害に起因する様々な溶質の再吸収不全により、骨軟化症など多彩な臨床症状を呈する症候群である。最近、特定のサプリメントによる腎障害が注目され、その病態の多くが本症候群であることが明らかになってきた。FSの原因の一つとして薬剤性のものが知られているが、その発現状況については不明な点が多い。本研究では薬剤性FSの発現状況を明らかにすることを目的として、PMDAが提供する医薬品副作用データベース(JADER)を用いて解析を行った。
【方法】解析には2004年から2023年までに報告された875,030例のデータを用いた。FSの単一被疑薬として報告例数の多いものについて報告オッズ比(ROR)を算出した。95%信頼区間を算出し、下限が1を超えるものを有意と判定した。
【結果】FSについて555例がヒットした。報告数は2008年までは年間10例以下であったが、その後増加を示し、2009年以降は22例から57例の間で推移した。転帰について、改善を示した割合は81%であった。報告数の多かった薬剤は、アデホビル(152例、ROR:2787.8、2022年販売中止)、バルプロ酸(124例、96.7)、ゾレドロン酸(37例、22.2)、テノホビル(14例、35.2)、デフェラシロクス(12例、19.0)、イホスファミド(11例、31.4)、エンテカビル(6例、34.1)であった(いずれも有意)。ロキソプロフェンについても5例の報告があったが、RORは0.97で有意ではなかった。単一被疑薬例のうち発現日と投与期間に関するデータがある49例についてFS発現までの日数を解析した結果、中央値は1067日であった。
【考察】薬剤性FSは毎年一定数の発現があり、多くが改善を示すものの約2割の症例では改善に至っていないことが明らかとなった。多くの症例で長期投与後に症状が発現していることから、リスクの高い薬剤を服用している場合は長期にわたり症状発現に注意し、副作用の兆候を早期に発見することが重要と考えられる。