第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Aグループ

2024年11月3日(日) 13:00 〜 13:40 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-169-A] 服薬補助ゼリー使用時の溶出試験法の妥当性検証と薬物溶出に及ぼす本品の影響

今井 俊輔, 戸上 紘平, 丁野 純男 (北海道科学大学 薬学部)

【目的】服薬補助ゼリーは、小児からシニア世代までの服薬困難感を解消する目的で開発された製品で、服薬時のむせや飲み込みにくさ、誤嚥、付着に伴う潰瘍発生を回避可能な服薬支援ツールとして用いられている。本品は、あくまで服薬サポートが目的であり、医薬品からの薬物溶出に影響してはならない。しかしながら、本品使用時の溶出性、およびこれを正確に測る方法論に関する情報は乏しい。本研究では、服薬補助ゼリー使用時の溶出試験実施方法を検証し、併せて、本品が薬物溶出に影響するか否かを評価した。
【方法】日局18または医療用医薬品品質情報集において、溶出試験法の定量法が紫外可視吸光度測定法とされている様々な薬効分類の医薬品を実験に供した。代表的な服薬補助ゼリーとして、らくらく服薬ゼリー®およびおくすり飲めたね®(龍角散)を用いた。通常使用量のゼリーに1回服用量の医薬品を包埋し、日局18または上記情報集の規定に従い、パドル法で溶出試験を実施した。各時間点で試験液を採取し、紫外可視吸光光度計にて吸光度を測定することで溶出率を算出した。また、一部の医薬品については、HPLCによる測定も行なった。
【結果・考察】ぶどう味およびいちご味の服薬補助ゼリーを用いた場合、一部の医薬品において、溶出率が100%を大幅に上回った。これは、ゼリーに含まれる成分が、紫外可視領域の光を吸収することに起因すると考えられた。そこで、ゼリーのみの試験液の吸光度を差し引いて補正した溶出率を計算したところ、ゼリーを使用しない場合とほぼ同等の値が得られた。また、この補正計算により得られた溶出率は、HPLCで薬物とゼリーに含まれる成分を分離して算出した場合と同等であった。以上の結果は、服薬補助ゼリー使用時には、吸光度の補正計算をすれば正確な溶出率が求められることを示しており、また、本品を使用しても薬物溶出には影響しないという情報を提供するものである。