[P-172-A] 嚥下障害を副作用にもつ薬剤の処方実態と誤嚥性肺炎発症との関連性
【目的】 誤嚥性肺炎患者の多くは高齢者であり、薬剤による嚥下機能低下がリスク因子となる。これらの薬剤の中には、添付文書の副作用項目に嚥下障害に関する記載がされているものがある。しかし、嚥下障害を副作用にもつ薬剤と誤嚥性肺炎の発症との関連性は不明である。本研究では、嚥下障害を副作用にもつ薬剤の処方実態と誤嚥性肺炎の発症への関与、処方に注意すべき患者群を明らかにすることを目的とした。
【方法】 JAMESの医薬品情報データを用いて、添付文書のその他の副作用に「嚥下障害」または「嚥下困難」の記載のある薬剤を抽出した。該当薬剤を、嚥下障害を誘発する可能性のある薬剤(以下、嚥下障害誘発薬)と定義した。ジャムネット(株)が保有する2015年10~12月の3ヶ月間の医科および調剤のレセプトデータベースを用い、嚥下障害誘発薬の内服薬の処方日数が14日以上の患者を対象とした。このうち、傷病名が嚥下障害や誤嚥性肺炎の患者の年齢および処方薬剤について解析した。(倫理審査No. 承240604-1)
【結果】 抽出した嚥下障害誘発薬は、有効成分ベースで55成分であった。調査対象期間中の全患者に対して嚥下障害誘発薬が1成分以上処方された患者の割合は、非高齢者の4.9%に対し、前期高齢者は10%、後期高齢者は21%と年齢区分に従い増加した。嚥下障害誘発薬が処方された患者24,278人のうち、嚥下障害の傷病名を付された患者は146人(0.6%)、誤嚥性肺炎は76人(0.3%)であった。誤嚥性肺炎76人のうち、嚥下障害を併せ持つ患者は23人(30%)であった。また、嚥下障害誘発薬の処方が1成分のみの患者と比較して、2成分以上の患者において誤嚥性肺炎の発症率が有意に高かった(p<0.01)。
【考察】 誤嚥性肺炎の予防には、嚥下障害誘発薬の成分数を減らすことが有効である可能性が示唆された。特に後期高齢者では、嚥下障害誘発薬が処方される可能性が高く、嚥下困難の発現に注意する必要がある。