第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム13
「患者の考え方を理解し、寄り添った対応ができる薬剤師を目指すために」

2024年11月3日(日) 09:00 〜 10:30 第4会場 (3階 311+312)

座長:亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部 薬学部長) 田沼 和紀(株式会社カメガヤ(フィットケアデポ) 調剤学術企画)

共催:日本認知療法・認知行動療法学会

[SY13-1] 服薬指導に活かす認知行動療法

藤澤 大介1, 2 (1.慶應義塾大学医学部 医療安全管理部/精神神経科 准教授、日本認知療法・認知行動療法学会 理事長, 2.日本認知療法・認知行動療法学会 理事長)

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 認知行動療法とは、人間の気分や身体症状が、認知(物事の考え方・受け止め方)や行動と相互に影響しあっているという理解の下に、認知や行動への働きかけを通じて気分や身体症状の改善を目指す心理療法である。
 認知行動療法は、気分障害(うつ病など)や不安障害には薬物療法と同等の効果を有し、統合失調症などには薬物療法との併用で増強効果を有している。さらに、慢性痛や不眠症などの様々な身体疾患(身体症状)にも有効というエビデンスを有している。
 服薬指導で認知行動療法を活用する方法はいくつかある。
 第一に、認知行動療法は、新たな行動習慣の獲得や維持(いわゆる「行動変容」)のための具体的な方法論をたくさん有している。
 第二に、認知行動療法は、前述したように薬物療法に比肩する治療であり、服薬指導の際に、薬物療法のメリットやデメリットを、他の治療と比較しながらバランスよく説明するため前提知識になりうる。
 私たちが何か提案を受ける際、単一の選択肢しか与えられないと、受け入れにあたって心理的な抵抗感が高くなるが、一方で、複数の選択肢と利点や欠点などを提示された場合には、(結果的に同じ選択肢を選ぶことになった場合にも)心理的抵抗感は低くなるであろう。医学的治療も同様である。「薬を飲むしかない」と言われると抵抗感が強くなりやすいが、薬や認知行動療法など複数の方法を呈示され、それぞれの特徴や限界や使い分けを説明されれば、治療に主体的に関わるモチベーションは上がる可能性があるであろう。自ら認知行動療法を実施しない場合にも、薬物療法と認知行動療法それぞれの特徴を知っておけば、よりバランスの取れた服薬指導となる可能性がある。
 本シンポジウムでは、精神科医の見地から、服薬指導の際に含めていただくと有益と考える認知行動療法の概略や、服薬指導に活用できると考えられるスキルを紹介する。