第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム13
「患者の考え方を理解し、寄り添った対応ができる薬剤師を目指すために」

2024年11月3日(日) 09:00 〜 10:30 第4会場 (3階 311+312)

座長:亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部 薬学部長) 田沼 和紀(株式会社カメガヤ(フィットケアデポ) 調剤学術企画)

共催:日本認知療法・認知行動療法学会

[SY13-3] CBT‐A研修プログラムの対面型による効果とオンライン型の可能性

渡邉 文之 (日本大学薬学部 地域医療薬学研究室 教授)

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 対面型CBT-A研修プログラムの研修効果について報告する。
 研修効果は研修前後に模擬患者(以後患者)に対するロールプレイを実施し、服薬支援満足度、WAISM(Working Alliance Inventory Short-form Modified version)、RIAS(The Roter Method of Interaction Process Analysis System)を用いて解析を行った。
 服薬支援満足度は研修後、“応対”、“説明”、“変容”、“満足”全てが有意に高まった。WAISMは研修後、薬剤師では“総合計”、“課題の一致”、“絆の形成”が有意に高まったが、“目標の一致”は差がみられなかった。一方、患者では全てが有意に高まった。患者・薬剤師間の心の乖離度は、研修前は、“総合計”、“課題の一致”、“絆の形成”、“目標の一致”、全てで見られたが、研修後では全てにおいて乖離は認められなかった。RIASでは薬剤師は“共感”、“安心の提供”、“心理社会的質問”、“服用したくない理由の確認”といった発話が有意に増加し、“薬に関する情報提供”の発話は有意に減少した。患者では“同意”、“心理社会的な話題”、“薬を飲みたくない理由”、“医学的状態・生活習慣・心理社会的なことに関する情報提供”は有意に増加したが、“薬に関する情報提供”に差はみられなかった。
 研修受講により、多くの薬剤師は患者の訴えに傾聴・共感することで信頼関係を構築できた。更に何人かの薬剤師はCBT-Aを活用し、患者をつらい気分にさせている偏った考えを導き出し、バランスの良い考えに気付かせることにより、患者のつらい気分を軽減させ、結果、患者は服薬に対して前向きな気持ちになることができた。
 現在は、コロナ禍後の研修受講スタイルの変化に合わせて、薬剤師向けのオンライン型CBT-A研修プログラムの開発を行っている。先んじて、登録販売者向けのオンライン型CBT-A研修プログラムを開発し、上述と同様の評価を行った結果、有益であることが示唆された。登録販売者と同様に薬剤師向けのオンライン型CBT-A研修プログラムを開発することができれば、遠方や時間的制約などの環境要因により対面式の研修を受講することが難しかった薬剤師に対してもCBT-Aを学んでもらう機会を提供することができると確信している。