第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム13
「患者の考え方を理解し、寄り添った対応ができる薬剤師を目指すために」

2024年11月3日(日) 09:00 〜 10:30 第4会場 (3階 311+312)

座長:亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部 薬学部長) 田沼 和紀(株式会社カメガヤ(フィットケアデポ) 調剤学術企画)

共催:日本認知療法・認知行動療法学会

[SY13-4] CBT-A研修プログラムに参加して

文字 愛羅 (株式会社わかば わかば薬局相模原緑店)

photo
 筆者は本研修を受講するまで、服薬指導時に不安や悩みを聴き取っても薬剤師として薬学的解決策を探す努力を無意識に優先してしまい、相手の心に寄り添う姿勢が足りていなかったという事実に気付いていなかった。
 1回目の研修では、自分自身に対してCBT-Aを活用することを学んだ。気分が落ち込んでいるとき、まず気分が落ち込んだ具体的な状況を把握し、その気分と考えを切り分け、その考えの根拠を見つけ、根拠と矛盾した事実(反証)はないかを自分に問いかけ、結果、考えの幅が拡がり(適応的思考)気分が楽になることを理解した。筆者は普段から考えすぎて負のスパイラルに陥りやすいため、まさに救世主的対処法であった。心のバランスを保つ術を得たことはとても大きな収穫であった。
 2回目の研修では、患者に対してCBT-Aをどのように活用するかを学んだ。自分自身に対して行う時とは異なり、患者から悩みや不安を聴き出すには、まず信頼関係を構築する必要がある。その上で、現在患者に見えている事実(根拠)と矛盾した事実(反証)を導くような問いかけをすることが最大のハードルであった。講師からは慣れるまでには時間がかかるが、実践を積み重ねていけば自然と行えるようになると言われ、普段の生活の中で実践してみることをアドバイスされた。事実、受講後に使える場面が至る所にあることに気がついた。
 一例としては、祖母が「私は弱虫だから腰が痛いと動けない」と言って毎週のデイサービスに行きたがらなかったケースがある。この時、筆者が聴き出した祖母の考えは、動きが遅いから周りが迷惑しているに違いないといった極端に偏ったものだった。そこで、矛盾した事実(反証)を導くような問いかけをしたところ、特段周りが迷惑していないことに気づき、結果、気分も楽になり、またデイサービス頑張ると言ってもらうことができた。
 研修後の実践で問題の解決に導けたときの達成感は計り知れない。最近では、患者にもっとうまく使えないかと考える機会も増え、私自身にとってとても良い傾向と考えている。