第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2
「住み慣れた地域での生活を最後のその時まで支えるために ~在宅緩和ケアにおける多職種連携で薬剤師が果たすべき役割~」

2024年11月2日(土) 15:30 〜 17:00 第2会場 (5階 503)

座長兼オーガナイザー:塩川 満(東京女子医科大学病院 薬剤部 薬剤部長)

[SY2-2] 在宅緩和ケア医が薬局薬剤師に望むこと

佐々木 淳 (医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)

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 在宅緩和ケアの主たる医療的介入手段は薬物療法である。しかし在宅では迅速な薬剤提供は容易ではない。症状の出現または増悪を医師が把握し、薬剤を処方し、薬剤師が薬剤を患者宅に届ける。緩和ケア病棟であれば瞬時に対応できるプロセスに一定以上の時間を要する。したがって患者が苦痛に耐える時間を短縮するために、在宅医療では予測指示と備蓄薬を事前処方しておくことが多い。

 しかし予想困難な症状も生じうる。特にがんの場合、種類や原発部位、転移の状況、治療履歴、合併症など、さまざまな要因の影響を受ける。生じうるすべての症状を羅列すれば、予測指示も備蓄薬の種類も膨大になる。これらをすべて事前処方することは保険診療上許容されない。予想された症状に対し、予測指示が十分に機能しないこともある。急激に経口摂取が困難になることもある。しかしオピオイドや鎮静薬の注射剤、微量輸液ポンプまで事前配備しておくことは難しい。

 このような場合、緊急で薬剤を患者宅に届ける必要がある。医師が往診し院内処方で対応、または薬剤師が処方せんに基づいて薬を届けることになる。リソースの総量(診療所医師11万人(管理医の過半数は60歳以上)・薬局薬剤師18万人)を考えると、薬局薬剤師に期待したいところだが、実際には難しい地域が多い。東京のような大都市部においても24時間、緩和薬剤やデバイスに確実に対応できる薬局はごく一部だ。
輪番制を試みている地域もある。しかし十分なオピオイドの種類の確保、注射薬・無菌調剤・デバイスへの対応、患者への適切な服薬指導、これらを均霑化できるのか。

 高齢化に伴いがんの生涯罹患率およびがん死亡は増加を続ける。在宅看取りを望む患者が7割に上る一方、それが叶うのは2割に満たない。自宅で過ごすことができた場合でも十分な疼痛緩和が提供できていないとする報告もある。
最適な医薬連携で、実効的な在宅緩和ケアの提供体制を一日も早く確保したい。