第18回日本薬局学会学術総会

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ワークショップ

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「薬局に必要とされる「多様性の尊重」」

2024年11月2日(土) 15:30 〜 17:00 第3会場 (3階 315)

座長:梶原 進之介(ウエルシア薬局株式会社 人事本部 薬剤師登販教育部 部長)

[WS1-1] 薬局に必要とされる「多様性の尊重」

藤彌 葵実 (株式会社JobRainbow DEIBラボ事業部 コンサルティング部 コンサルタントマネージャー)

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2023年6月23日に“性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律”(通称LGBT理解増進法)が施行されるなど、多様な人々に対する理解の増進が求められている。“電通LGBTQ+調査2023”ではLGBTQ+の割合は9.7%とされ、決して少なくない場面でその存在を前提とした対応が必要であることが明らかになりつつある。車いすを利用していることや、高齢者であることなど、初対面で分かりやすい“表層の多様性”から、性的指向や、介護の有無など、一目では分かりにくい“深層の多様性”へ、対応が必要とされるケースが深化している。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)への理解と、具体的な対応の検討は、薬局においても重要であり、常日頃から備えておかなければ、実際のケースが発生した場合に適切な対応を取ることは困難である。
DEIの視点は、人材確保や雇用継続の観点からも重要であり、特に若年層の関心が高い。Z世代(18歳~24歳)の学生を対象にした調査では、“自分の希望の業界・職種の場合、年収350万円でD&Iに消極的な企業と、年収300万円でD&Iに積極的な企業を選べるとしたら、どちらで働きたいか”という問いに対し、68.7%が“年収300万円でD&Iに積極的な企業で働きたい”と回答している。(出典:株式会社RASHISA Z世代のD&Iと働き方に対する意識調査)
薬局においても、多様性についての理解を深めることで、今まで見逃してきた相談のしにくさや利用しづらさを解消できる可能性がある。例えば、問診票に性別欄がある場合、性別欄が必要な理由を付記したり、任意記載とすることで、ノンバイナリーなど自身の性別を男女どちらかに当てはめることに負担を感じる顧客にも寄り添うことができる。また、チック症状について事前の知識があれば、不随意に声をあげたり体を動かしたりする顧客に対して、不必要に心配したり声をかけたりすることなく、薬局に求められている真摯な対応に集中して行うことができる。多様なルーツの人が日本に暮らしていることを知ることで、日本生まれ・日本育ちの顧客に「日本語お上手ですね」など声をかけてしまうことも防ぐことができる。
事前に知識を得ておくことで、日常の様々な場面で今まで見えていなかったハードルや負担に気づき、対応を改善することに繋がるため、薬局においても多様性を学び尊重することが重要である。