第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-03*] KIMサイト拮抗型ERK2キナーゼ阻害剤の作用機序の解明

吉田 茉由1, 森 悠里花1, 永尾 春菜2, 澤 匡明2, 木下 誉富1 (1.大阪府大院理, 2.カルナバイオサイエンス)

ERK2はシグナルカスケードの下流のキナーゼや転写因子をリン酸化によって生理的調節を行っているキナーゼである。細胞増殖や分化に関わり、癌や糖尿病など様々な疾患に対する薬物標的とされている。転写活性化因子STAT3は糖新生系酵素群の遺伝子発現を抑制する。ERK2はSTAT3をリン酸化することで、この機能を遮断する。したがって、ERK2によるSTAT3のリン酸化を阻害することで2型糖尿病の治療効果が期待できる。ATP拮抗型ERK2阻害剤はいくつも発見されているが、キナーゼのATP結合部位が高度に保存されていることから、完全なERK2選択性を出すことは難しい。そこで、我々はATP非拮抗阻害剤の創出を目指した。これまでにERK2のアロステリック基質認識部位であるKIMサイトに作用するペプチド阻害剤(PEP)を見出した。PEPは2型糖尿病マウスに対して治癒効果を示す。今回、インシリコスクリーニングより得たPEP拮抗型ERK2阻害剤 (Hit-1) について、X線結晶構造解析を行い、その結合様式を明らかにしたところ、Hit-1は他のMAPK(p38a, JNK1)に対して選択性を示すことが推察された。実際に、他のMAPKに対して阻害活性測定を行ったところ、Hit-1はERK2選択的であることが確認された。以上の結果は、より強力な高選択性ERK2アロステリック阻害剤の開発基盤となることを示唆する。