第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-19*] ヒトSTOM SPFHドメインの立体構造の決定と高濃度で形成する多量体の解析

片岡 滉貴1, 鈴木 翔大1, 天野 剛志1, 合田 名都子1, 日比野 絵美1, 別所 賢2, 瀧口 金吾2, 大嶋 篤典1, 廣明 秀一1 (1.名大院・創薬, 2.名大院・理・生命)

ヒトStomatin (hSTOM)は288アミノ酸からなる膜タンパク質であり、赤血球膜の裏打ちのSpectrinやActinの複合体に含まれていることが知られているが詳細な分子機能は不明である。STOMはSPFH (Stomatin, Prohibitin, Flotillin, HflC/K)ドメインを有しており、本研究ではhSTOMの機能の解明のためSPFHドメインに着目した。まず我々はhSTOM-SPFHの立体構造の決定を行ったが、精製した試料を凍結乾燥後に重水を添加したところ、すぐには溶解せずに時間をかけて溶けた。この性質のために主鎖アミドプロトンのH/D交換実験を行うことができず、水素結合の情報が得られなかった。そこで、Tomaszらの報告したアミドプロトンの化学シフト温度係数から分子内水素結合の有無を判別する手法を用いてhSTOM-SPFHの水素結合の情報を得ることで立体構造の精密化を行った。また凍結乾燥後に水を添加した際、リン酸緩衝液に透析した場合とビストリス緩衝液に透析した場合では量に差があり、2種の緩衝液中でのHSQCスペクトルでは一部のピークの位置が異なることを発見した。このピークの差はビストリス緩衝液にリン酸ナトリウムを添加することで解消され、hSTOM-SPFHとリン酸との相互作用が示唆された。加えて透過型電子顕微鏡による凍結乾燥試料の観察では、線維状あるいはシート状の多量体が確認でき、限外濾過による濃縮時の試料でも同様の多量体が確認できた。本研究の結果からhSTOMはリン脂質と相互作用して多量体を形成し膜の裏打ちとして機能するという仮説を提唱する。