第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-23*] ジャガイモやトマトに含まれる有毒なスピロソランを代謝変換する16位水酸化酵素と20位脱水素酵素の反応メカニズム

宮崎 麻紗美1, 藤山 敬介2, 佐藤 裕介2, 日野 智也2, 水谷 正治3, 秋山 遼太3, 加藤 純平3, 重田 育照4, 庄司 光男4, 永野 真吾2 (1.鳥取大・院持続性社会, 2.鳥取大・院工, 3.神戸大・院農, 4.筑波大・計算科学研究センター)

2-オキソグルタル酸 (2OG) と非ヘム鉄を補因子とする2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ (2OGD) は、酸化活性種による水素の引き抜きを起点に水酸化や不飽和化などの反応を利用して、二次代謝産物の生成、代謝など多様な役割を担っている。我々はトマト未熟果実中の毒性成分トマチンに代表されるスピロソランを代謝変換する4種類のトマチン2OGDに注目している。これらの酵素は50%以上の相同性を示すにも関わらず、トマチンのC16, C20, C23の水酸化やC20の脱水素反応をそれぞれ特異的に行う。我々はこれらのトマチン2OGDが位置特異的に水酸化または脱水素反応を行うメカニズムを解明することを目的とし、基質結合型トマチン2OGDのX線結晶構造解析やQM/MM法による解析を進めている。16位水酸化酵素と20位脱水素酵素は、本来の補因子であるFe2+の代わりにZn2+と2OG, トマチンを加えて結晶化し、それぞれ1.83 Åと1.40 Åの分解能で立体構造を決定した。これらの酵素では基質の骨格が反転して結合することで、C16, C20に特異的な反応を可能にしていた。また、16位水酸化酵素ではC16とZn2+との距離は4.4 Åである。一方で20位脱水素酵素ではC20とZn2+との距離が5.0 Åと一般的な水酸化酵素と比較してわずかに遠く位置しているため、酸化活性種による水素引き抜きは可能であるが水酸化反応は起こらないことが示唆された。発表では20位脱水素酵素による水素引き抜きと、それに続いて起こる環拡大反応のメカニズムについても結晶構造に基づいて議論したい。