[1P-29*] 分子動力学計算で解明する維持メチル化酵素 DNMT1 の活性化メカニズム
細胞は原則として同じ塩基配列を有するにも関わらず、異なる性質を持つ。この理由は、細胞ごとにDNA修飾が異なるためである。例えば、DNA のメチル化は遺伝子の発現を制御するため、メチル化のパターンが異なれば発現する遺伝子は異なる。つまり、メチル化パターンは細胞固有の性質を決定する要因の一つである。一方で、DNAは半保存的に複製されるため細胞の性質を引き継ぐためには、ヘミメチル化DNAを2本鎖ともメチル化する必要がある。このような過程を維持メチル化と呼び、メチル化パターンを娘細胞に引き継ぐ役割を担う。DNMT1(維持メチル化酵素1)は、維持メチル化において中心として働く酵素である。DNMT1の活性はDNA複製時にのみ要求されるため、高度に制御される必要がある。具体的には、DNA複製時以外はDNMT1のDNA結合部位が露出しておらず活性がない。近年、ユビキチン化されたヒストンがDNMT1を活性化することが明らかになった 。しかし、ユビキチンとヒストンの複合体がDNMT1の構造変化を誘起する活性化メカニズムは不明であった。本研究では、分子動力学シミュレーションを用いてDNMT1の活性化におけるユビキチンとヒストンの機能解明を目的として研究を行った。