第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-36*] 人工イオンチャネルの全原子分子動力学シミュレーション

中川 真由子1, 浴本 亨1, 山根 努2, 村岡 貴博3, 佐藤 浩平4, 金原 数4, 池口 満徳1,2 (1.横浜市大・生命医, 2.理研MIH, 3.東京農工大・工, 4.東工大・生命理工)

東京工業大学の金原らは、リガンド応答的にカチオンを透過させる人工イオンチャネル2merを開発した([1]T. Muraoka et al., Nat. Commun. 2020, 11, 2924, 1-9.)。2merのモデリングと、短時間の分子動力学シミュレーション(MD)による構造最適化によって、実験結果と矛盾しない、膜中における2mer-リガンドの複合体モデル[1]が提案されているが、原子レベルでのイオン透過のメカニズムは明らかになっていない。本研究では、イオン透過のイベントをシミュレーションすることで、2merのイオン透過メカニズムを解明することを目的とする。既存力場を用いた長時間MDを実施したところ、自発的なイオン透過は起こらなかった。そこで、既存力場を検証したところ、2merのベンゼンや三重結合のπ電子とカチオン間の相互作用等が過小評価されていることがわかってきた。そのため、カチオン-π相互作用等を修正した力場を作成し、MDに用いたところ、2merとカチオン間の相互作用が改善された様子が確認できた。また、初期構造で孔内に存在した水分子が短時間で膜外へ排出されていたことから、既存力場における2merと水分子間の相互作用エネルギーの検証を行ったところ、2merの三重結合と水分子間の相互作用が不十分であることも明らかとなった。今後はさらなる力場改良を行うことや、構造サンプリングを行うことによって、安定なイオン透過の系の構築を目指す。