[1P-41*] Improvement and verification of the coarse-grained force field for protein disordered regions
天然変性タンパク質(IDP)は生理的条件下で特定の構造を取らず、X線結晶構造解析等の実験から分子構造の詳細情報を得ることは難しい。分子動力学シミュレーションは、IDPの機能を研究する手法の一つである。現在一般に用いられている全原子モデルではIDPの実験結果を再現するようにパラメータの改良が行われているが、大規模構造変化を伴うため構造サンプリングに時間がかかる。そこで本研究では、アミノ酸1個を1粒子とする粗視化モデルにおいて、膨大な実験データに基づくベイズ推定によってIDPに適した力場を構築した。従来のモデル(Terakawaら, 2011)ではアミノ酸間の結合角と二面角についての分布は中心のアミノ酸の種類によって約20通りに分類されている。本研究では、結合角分布について両隣の残基の情報を加えて8000通り、二面角について中央2残基の情報による400通りに分類することで、より配列特異性の高いモデルを構築した。PDBを調査した結果、配列によってはサンプル数が十分でないことが判明した。そこでベイズ推定を用い、従来の分類を事前分布の中心と捉え、MCMC法により各分布を推定した。得られた分布を元に繰り返し逆ボルツマン法で力場を最適化した。新モデルを従来モデルと比較したところ、より詳細な情報を表現できるような形状であった。また、p53のN末端領域についてのX線小角散乱とRDCの実験データに対して、新モデル及び、従来モデルの予測値を比較したところ、従来のモデルよりも実験値に近い値が得られた。