第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-59*] 大腸菌フェリチン内腔に形成される鉄コアのリン酸存在下と非存在下における形態学的な違い

桑田 巧1, 佐藤 大輔1, 藤原 和夫1, 吉村 英恭2, 池口 雅道1 (1.創価大・理工・生命理学, 2.明治大・理工)

フェリチン(Ftn)は、生体内で鉄の酸化と貯蔵を担う24量体の球殻蛋白質である。酸化されたFe3+は、リン酸基や水酸基を含んだ不溶性の鉄コアとして、直径80ÅのFtn内腔に貯蔵される。バクテリア由来のFtnは、哺乳類由来のFtnに比べ、鉄コア中のリン酸含有量が高いことが知られている。本研究では、リン酸存在下、非存在下で、大腸菌由来フェリチン(EcFtnA)に鉄コア形成を誘導し、X線小角散乱(SAXS)、分析超遠心、透過型電子顕微鏡(TEM)により、形成された鉄コアの形態比較を行った。沈降係数の分布はリン酸存在下では単一のピークを示した一方で、リン酸非存在下では複数のピークを示した。また、TEM観察から、リン酸存在下では、比較的均一な円形状の鉄コアを形成するが、リン酸非存在下ではEcFtnA内腔に複数の微小な鉄コアを形成することが分かった。リン酸存在下のTEM画像から得られる鉄コアの直径はおよそ7 0ÅとFtn内径に近い値を示した。一方で、リン酸存在下でのSAXSの散乱関数から得られる慣性半径は36Åであり、この値は、鉄コアを半径40Åの均質な球として仮定した場合より5Å大きく鉄コアが中空であることを示した。一方、超遠心分析の結果は複数個の鉄コアがそれぞれ成長していることを示している。本研究で観察されたリン酸の有無による鉄コア形態の違いは、リン酸の影響により異なる機構によって鉄コアが形成されることを示唆している。