第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-62] 人工ペプチドによるタンパク質の液-液相分離誘導

池之上 達哉1, 宗 正智2, 藤原 敏道2, 菅 裕明1 (1.東大・理・化, 2.阪大・蛋白研)

タンパク質の液-液相分離(LLPS)は細胞内で膜のないオルガネラとして様々な形で重要な役割を果たしている。タンパク質の相分離及び相転移に基づくパラダイムは、タンパク質凝集を伴うさまざまな生命現象の物理化学的本質を理解するとともに、その応用をもたらすと期待できる。本研究ではRaPIDシステム(Random Peptide Integrated Discovery system)と呼ばれる革新性の高いスクリーニング手法を駆使し、パーキンソン病の原因タンパク質であるα-シヌクレインのLLPSを誘導する特殊ペプチドの探索を行った。α-シヌクレインが高次に会合したアミロイド線維を標的としてセレクションを行った結果、7つの特殊環状ペプチドが単離された。いずれの特殊環状ペプチドも生理的条件下で濃度依存的にα-シヌクレインのLLPSを誘導し、数μmの液滴を形成した。低ペプチド濃度かつ短時間で効率よくLLPSを引き起こし、共焦点顕微鏡によりα-シヌクレインとペプチドが液滴内に共局在していることを確認した。また、2次元NMR測定によりペプチドがα-シヌクレインの特定の領域と相互作用していることを示した。これらの結果から、LLPS誘導ペプチドによって通常LLPSを起こさないターゲットを相分離させたり、細胞内で一つだけ、数秒だけ存在するようなLLPSを安定に発生させ制御できる可能性を示した。タンパク質の相分離及び相転移の基礎・応用研究を飛躍的に進展させると期待できる。