第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-66] Aromaphilicity index: アミノ酸と芳香族表面の相互作用の指標

平野 篤1, 亀田 倫史2 (1.産総研・ナノ材料, 2.産総研・AIセンター)

 タンパク質の構成要素であるアミノ酸の物性を示す指標として、親水性や疎水性などが知られている。しかしながら、グラフェンやカーボンナノチューブのような芳香族表面へのアミノ酸の親和性は指標化されていなかった。
 今回、芳香族表面へのアミノ酸の親和性を示す新しい指標—Aromaphilicity index(芳香族親和性インデックス)—を提案する。この指標は、アミノ酸1分子と芳香族表面(グラフェン)の間の結合自由エネルギーに基づいて定義された値である。なお、結合自由エネルギーは分子動力学計算によって定量化され、得られた値は実験データとも高く相関した。アミノ酸と芳香族表面の親和性は、アミノ酸側鎖の平面性が高いほど、あるいは、芳香族表面の曲率が小さいほど、高くなる傾向にあった。この結果は、アミノ酸と芳香族表面の親和性が双方の平面性に大きく依存することを示している。これにより、アミノ酸と芳香族表面の親和性は主として分子間力に支配されることが示唆された。
 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のAromaphilicity indexを利用することで、立体構造が同定されている任意のタンパク質表面のAromaphilicity(芳香族親和性)を可視化することも可能になった。本手法を用いれば、タンパク質と芳香族表面の間の親和性の予測や設計が可能であり、グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノ材料を用いたデバイス開発や複合素材開発に役立つことが期待される。