第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-75(WS2-6)] ナノディスク再構成型BhuUV-Tによる段階的な基質輸送の分光学的観察

木村 哲就1, 浅田 拓也1, 林 沙英1, 鍔木 基成1, 城 宜嗣2, 杉本 宏3 (1.神戸大・院理・化, 2.兵県大・院生命理, 3.理研・SPring-8)

ABCトランスポーターはATPの結合・加水分解に伴って膜貫通ドメインが構造変化をすることで基質が輸送されるモデルが提案されている。しかし、基質の化学状態が輸送過程において変化しないことから、ペリプラズムタンパク質(PP)からの基質の受け渡しや膜間輸送がどのATPの反応や構造変化によって引き起こされているのかという、分子機構の詳細は明らかにされていない。そこで、「輸送」を直接観察し、分子機構を明らかにするために、結合状態に依存して吸収スペクトルが変化するヘムを輸送基質とするABCトランスポーターを用いた紫外・可視吸収分光解析を試みた。しかし、可溶化に用いる界面活性剤がヘムと相互作用してしまい、 吸収スペクトルの帰属が困難であったことから、本研究では「ナノディスク」へのBhuUVの再構成を試みた。BhuUV-ndを用いて、ヘムとBhuUVあるいはPPであるBhuTとの結合状態を吸収スペクトル測定から明らかにした。また、 BhuUV、BhuT-ヘムの混合液にATPを添加すると、相互作用していないヘムが増加したことから、輸送がATP加水分解によって引き起こされることが示唆された。加えて、種々のヌクレオチド結合状態に対するBhuUVとBhuTの複合体形成を蛍光検出サイズ排除クロマトグラフィーから検討し、ヘムの受け渡しと輸送が段階的に進むことを明らかにした。本発表では、ATPとの反応の初期段階について起こるヘムの輸送についても議論する予定である。