第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスター賞フラッシュトーク

[2FT-1] 物性・フォールディング (2P-45~2P-60)

2021年6月17日(木) 14:00 〜 14:30 チャンネル1

座長:相沢 智康(北海道大学)、齋尾 智英(徳島大学)

[2P-47*] 液滴内へのタンパク質の取り込みと相状態の変化

榊原 菜々子 (筑波大院・数理)

細胞内にある生体分子は液-液相分離によって液滴を形成し、機能が制御されているものがある。液滴は生体膜のような仕切りがなく、内部には流動性があり、液滴の内外に分子の移動が可能である。しかし、液滴内への分子の分配の法則はわからないことが多いのが現状である。本研究では、単純な系を用いて液滴の内部にも液滴がある多相液滴を形成させる単純な系の構築を目的とした。カチオン性ポリマーであるPoly diallyl dimethyl ammonium chloride (PDDA)とアニオン性ポリマーであるCarboxy methyl- dextran sodium salt (CMDX)を混合すると、予想どおり静電相互作用によって液滴が形成された。このモデル液滴に、正の電荷をもつLysozyme (LYZ)や負の電荷をもつOvalbumin (OVA)を混合すると多相液滴を形成し、時間とともに液滴内部の液滴が融合し、単相の液滴へと変化することがわかった。混合した直後にはタンパク質と高分子との静電相互作用を駆動力とする液滴が安定化されるため、多相液滴が形成したのだと考えられる。3成分を混合するだけで再現性よく多相液滴を形成することから、夾雑系でのタンパク質の溶液状態を理解するモデル系になるだろう。