第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-32] 蛋白質天然変性領域における電荷分布が液-液相分離現象に及ぼす影響に関する理論的検討

笠原 浩太1, 寺澤 裕樹2, 沖川 純也2, 今村 比呂志1, 肥後 順一3, 加藤 稔1, 高橋 卓也1 (1.立命館大・生命, 2.立命館大・院・生命, 3.兵庫県立大・院・シミュレーション)

蛋白質の天然変性領域が流動的な集合体を可逆的に形成し、細胞内において液滴様の濃縮体を形成する液-液相分離現象が近年注目を集めている。その生物学的意義や物理化学的メカニズムの解明に向け様々な検討が行われているが、どの様なアミノ酸配列がどの様な液-液相分離挙動を引き起こすのか、その原理の解明が求められている。これまでにFUS等の蛋白質において天然変性領域上のリン酸化が液-液相分離を制御することが知られており、これは同符号の電荷が多量に導入されることで静電反発が起こり、集合体が離散するものと考えられている。しかし配列上における電荷の分布には多様なバリエーションが考えられ、同符号の電荷がどのように分布すればどのような液-液相分離特性を示すのか、その関連はよく分かっていない。そこで本研究ではFUS天然変性領域の一部を液-液相分離のモデル蛋白質として扱い、様々な電荷分布をもつ変異体配列について分子シミュレーションによって系統的な解析を行った。その結果、総電荷量が同一でも、その分布によって挙動が大きくことなることが分かった。電荷が一部に局在化すると、電荷のない領域によって小さな集合体を形成し、電荷を持つ領域によって界面を形成することが分かった。一方で電荷が非局在化すると、集合体を形成できなくなった。この結果は配列上の電荷分布から液-液相分離の挙動をある程度予測できる可能性を示唆している。