第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-36] 機械学習による蛋白質の水和構造予測

佐藤 航地1,2, 大出 真央1,2, 中迫 雅由1,2 (1.慶應・理工・物理, 2.理研・RSC)

 蛋白質は水の中で折りたたまれ機能することから、蛋白質―水界面の水和構造を研究してきた。低温X線結晶構造解析で得られた立体構造から、アミノ酸残基内極性原子周辺の水和構造分布を調べて経験的水和分布関数を構築し、それを利用した水和構造予測法を開発して、極性原子周辺の水和水分子分布を高い確率で予測できるようになった。しかしながら、極性原子周辺の水和分布パターンの足し合わせで分布密度を予測する、疎水性表面の水和構造予測に無力であるなどの問題があった。また、近年、クライオ電子顕微鏡を用いた蛋白質の立体構造解析が盛んになったものの、酸素原子の散乱断面積に小ささにより、高分解能でも水分子を同定することが困難であり、将来の創薬などを目指した構造解析では、水分子位置予測が不可欠と考えられた。 本研究では、多数の高分解能X線結晶構造解析モデルの表面や内部における水和水分布を機械学習し、構築されたニューラルネットワークによって、任意の蛋白質の水和構造予測を行うことを試みた。その結果、未学習蛋白質に対して予測された水和水分子分布密度は、そのX線結晶解析で得られた水和水分子位置を概ね包含するものであった。また、これまで予測困難であった疎水性ポケットなどで水和水分子分布を予測することができた。発表では、機械学習アルゴリズム、教師データや予測結果などについて、具体的なデータを提示しながら、本研究の有効性について議論したい。