第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-39] 光反応性架橋分子を利用したDicer-PAZ-Platformによる基質RNAの3’末端領域の認識能の解析

鈴木 駿也, 横田 徳子, 津田 弘貴, 神谷 由紀子, 浅沼 浩之 (名大・工・生命分子)

RNAi機構は遺伝子発現を抑制する生体反応であり、核酸医薬への応用が期待されている。本機構においてDicerタンパク質は長鎖dsRNAを切断し、生み出された短鎖dsRNA (miRNA, siRNA)はAgo2に受け渡されRISCを形成して標的のmRNAを切断する。したがって、DicerによるdsRNAの認識機構の解明はRNAiを理解し、核酸医薬を開発する上で重要である。
これまでにDicerとRNAの複合体において結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡などを用いた解析が行われているが、RNA認識に伴うDicerの構造変化は十分な理解が得られていない。本研究では、基質RNAの3’末端を認識することが知られているDicerのPAZドメインとそれに続くPlatformドメイン (Dicer-PP)に着目し、本ドメインにおける基質RNAの3’末端領域の認識能の解明を試みた。
Dicer-PPとRNAの相互作用部位を特定するため、光反応性架橋分子であるCarbazole Diazirineを導入したRNAを設計し光クロスリンク解析を行った。クロスリンカーの導入位置が異なるdsRNAを用いて、各dsRNAとDicer-PPの光クロスリンク反応産物を解析したところ、Dicer-PPはdsRNAの内部とも相互作用していることが明らかとなった。また、RNA内部におけるクロスリンク効率は、フルマッチdsRNAよりも内在性のDicerの標的を模したミスマッチ入りdsRNAにおいて増加した。さらに、LC-MS/MS解析によってDicer-PPのRNA相互作用部位を特定した。以上の結果から、Dicer-PPはdsRNAの3’末端から内部領域の構造を認識し、基質識別を行う機能をもつことが示された。