[2P-49*] Size evolution of human immunoglobulin G aggregates induced by human serum albumin
抗体製剤は高い特異性と生体適合性をもつことから、ガンをはじめとする多くの疾患の治療薬として注目を集めている。しかし、抗体は不安定な蛋白質であることから容易に凝集体を形成し、望まぬ免疫反応を引き起こす恐れがある。さらに凝集体は生体内の蛋白質と会合し大きくなることで、より深刻な免疫応答を誘発する可能性がある。そこで本研究では、ポリクローナルヒトIgG抗体の凝集体と血中蛋白質であるヒト血清アルブミン(HSA)の会合反応を動的光散乱法を用いて調査した。使用した抗体凝集体は、加熱ストレスによって形成されたFab領域が変性した凝集体とpHシフトストレスによって形成されたFc領域が変性した凝集体である。加熱ストレスによって形成された抗体凝集体ではHSAとの会合による粒径成長は観察されなかったのに対し、pHシフトストレスによって形成された抗体凝集体では明確な凝集体の粒径成長(約25倍)が観察された。ただし、この粒径成長は塩の添加により抑制された。これらの結果から、抗体凝集体の粒径成長はヒトIgG抗体のFab領域およびヒンジ部位に存在するローカルな正の電荷とHSAのグローバルな負の電荷の間に働く静電引力によって引き起こされる会合反応によるものと考えられる。以上の結果より、抗体凝集体は生理条件下では比較的安定である一方、塩による静電遮蔽がない条件では不安定であり、会合が促進されることがわかった。