[2P-58*] Phase separation propensity of amino acids in oligopeptide/DNA liquid-liquid phase separation systems
タンパク質と核酸は、多点的な静電的相互作用やπ-π相互作用を介して液-液相分離(LLPS)する。LLPSしやすい配列に荷電性や芳香族のアミノ酸が多いことは経験的に明らかだが、各アミノ酸のLLPSへの寄与を示す「相分離性」の指標は未だ明確で無い。本研究では、LLPS予測法の確立に向け、各アミノ酸の相分離性を表す指標を実験的に確立することを目的とした。アデニンの繰り返しDNA(dA15)とリジンの繰り返しペプチドの混合によって生じるLLPS系をモデルに選択し、ペプチドのC末端に結合した非イオン性の各アミノ酸がLLPSに与える影響を、顕微鏡観察と分光分析により調査した。dA15溶液にペプチドを加えて明視野顕微鏡で観察すると、調べた全てのペプチドは特定の濃度比で液滴を形成した。そこで、滴定による濁度モニタリングからLLPSが生じる臨界濃度を各ペプチドに対して決定し、これをlog Pow値や溶解度などのアミノ酸の物性指標と比較すると、いずれの指標とも相関が低かった。他のアミノ酸に比べて臨界濃度が著しく低かった芳香族アミノ酸を除いた場合、臨界濃度はlog Pow値と負の相関を示した(r = 0.89)。LLPSに及ぼす芳香族の正の寄与と疎水性の負の寄与はタンパク質の凝集や高分子電解質複合体の形成などには見られない独自の傾向であるため、当該研究で実験的に得られた指標はLLPSの予測に資する要素になると考えられる。