第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-62*] 難水溶性抗癌剤SN-38に対して高親和性に結合する癌標的性タンパク質カプセルの機能評価

大久保 理奈, 吉田 はるな, 古田 航祐, 寺岡 佳晃, 中辻 匡俊, 乾 隆 (大阪府大・院・生命環境)

我々は,リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 (L-PGDS) が複合体形成を通じて難水溶性抗癌剤7-ethyl-10-hydroxy-camptothecin (SN-38) の溶解度を著しく改善すること,およびSN-38/L-PGDS複合体が優れた抗腫瘍効果を示すことを報告してきた。一方,輸送中における複合体からの薬剤漏出や正常細胞に対する非特異的な薬剤送達は重篤な副作用の原因となることから,薬剤輸送体であるL-PGDSへの薬剤放出制御能,および腫瘍標的能の付加が望まれる。そこで,SN-38に対する結合親和性の向上を目指し,in silico解析によりSN-38と相互作用すると予測された領域に位置するMet94をTrpに置換した。さらに,腫瘍標的配列CRGDKをC末端に付加し,新規タンパク質カプセルM94W-CRGDKを作製した。本研究では,M94W-CRGDKのSN-38に対する薬剤キャリアとしての有用性を評価した。まず,M94W-CRGDKの薬剤放出制御能を評価するために, SN-38放出試験を行った。その結果,PBS中におけるSN-38/M94W-CRGDKからのSN-38放出量は,SN-38/L-PGDS複合体と比較して約35%抑制されることが判明した。また,還元環境下 (10 mM DTT存在下) においては,PBS中と比較して, SN-38の放出が促進されることが明らかとなった。さらに,担癌マウスを用いた抗腫瘍実験を行ったところ,SN-38/M94W-CRGDK複合体は,SN-38/L-PGDS複合体と比較して有意に高い抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。以上の結果より,M94W-CRGDKはSN-38に対する薬剤キャリアとして有用であることが明らかとなった。