第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-77*] マウスCD3に対する環状化一本鎖抗体の作製と評価

時 瑞1, 岡崎 匡2, 大水 良太1, 楊 一帆1, 山内 聡一郎1, 劉 宸江1, 福田 夏希1, 佐藤 卓史1, 小橋川 敬博1, 森岡 弘志1 (1.熊大院・薬, 2.熊大・薬)

二重特異性T細胞誘導抗体(Bispecific T-cell engager BiTE)は、T細胞上の抗原と腫瘍細胞上の抗原の両方を認識する抗体である。腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に対する高い選択性と高い殺傷性を示す。CD3はT細胞に特異的な抗原であり、BiTE間で共通する標的分子である。一本鎖抗体 (scFv) は、IgGの重鎖と軽鎖の抗原結合ドメインを柔軟なペプチドリンカーにより連結した組換え抗体であり、BiTE作製における重要な部品である。しかし、scFvには特有の凝集性があり、その克服が課題であった。インテイン反応を用いてscFvのN末端とC末端をペプチド結合により連結し、環状化することで、凝集性を抑制する手法を構築している。本研究では、環状scFvを用いたBiTEの創製を目指し、抗マウスCD3抗体 2C11について、環状scFvを作製した。環状scFvの発現に最適化した大腸菌株および発現ベクターを使用することで、環状2C11-scFvを調製した。次に、示差走査蛍光測定を用いた熱変性実験を行ったところ、協同的な熱転移が確認され、安定な立体構造の形成が確認された。また、マウスCD3とマルトース結合タンパク質との融合タンパク質を用いたプルダウンアッセイにより、環状2C11-scFvが抗原結合活性を有することを確認した。現在、分子動力学計算を用いて、環状2C11-scFvの安定性を高める変異体の設計を進めている。本会では、その結果についても議論する予定である。