[2P-78*] A novel approach for expanding the utility of antibody engineering
抗体や抗体模倣タンパク質の親和性や特異性の向上を目的とする抗体工学の中で、最も頻用されているのがファージディスプレイ法である。しかし本手法において、低親和性といった性質の悪い変異体が創出されることも少なくない。そこで本研究では、ファージディスプレイ法の成功確度の向上を目指し、1.良質なファージライブラリーの作製方法と、2.効率的なスクリーニングシステムの探索・検証を行った。 1.良質なライブラリー作製には、そこに含まれる変異体クローンの総数が多いことが望ましい。この総数を増やすために、ファージの分泌生産数の鍵となるシグナル配列を対象に、分泌経路の異なるシグナル配列のキメラ化を検証した。その結果、複数のキメラ化配列で、ファージの分泌生産量の向上に有効であることが確認された。 2.近年、ヘルパーファージの中でタンパク質提示効率に優れるHyperphageが主流となっている。しかし、我々を含む複数の研究グループにおいて、得られる変異体の大部分が低親和性であると指摘されている。今回我々は、ファージあたり5分子のタンパク質を提示するHyperphageの特性が、多価結合に依存した変異体を多く選別してしまい、結果、単価結合能の低い変異体の創出に繋がっていると予想した。そこでスクリーニング時に、Hyperphageに加えて、ファージあたり0.1分子以下とタンパク質提示効率の低いM13KO7をあえて導入することで、この問題の克服を試みた。 本発表では、上記の実験結果の詳細とその有効性について報告する。