[3P-24] Polymorph analysis by hierarchical clustering of mixed-state diffraction data
SPring-8において開発されたZOOシステムは,タンパク質結晶のX線回折データ測定を全自動化することで,非常に高効率なデータ収集を実現した。さらに得られた回折データ処理や,複数結晶からのデータのマージ処理が自動化されたことで,複数結晶からのデータを利用した構造決定が容易になり,これまで単一結晶では高分解能構造解析が難しかった膜タンパク質などにおいて多数の構造決定に成功している。自動化によって達成された高効率なデータ収集によるタンパク質構造解析は,今やHDRMX(High Data-Rate Macromolecular Crystallography)と呼ばれるタンパク質X線結晶構造解析の新たなパラダイムとなりつつある。これまでKAMOが回折データを強度データに変換していたが,HDRMXで得られた大量のデータを強度データのみで評価し,有用なデータを見出すことは難しい。我々は現在,自動構造解析パイプラインNABEの開発を進めており,分子置換や異常分散を用いた位相決定を自動化することで,HDRMXにおいて大量に得られたデータを電子密度マップベースで比較し,網羅的な解析結果を俯瞰できるようにした。さらに,複数の結晶からのデータに対して適切な種類の階層的クラスタリングを適用することで,構造多型の解析が可能となりつつある。この方法は結晶内分子の平衡状態,非平衡状態を問わず適用でき,酵素反応やダイナミクス理解への展開など,今後の構造機能相関解析において必須の解析基盤となるだろう。