[3P-50] Dissociation mechanism of complexes between a zinc-binding chaperone ERp44 and its clients
ERp44は、会合未成熟な分泌タンパク質やEro1αなど一部の小胞体局在タンパク質をゴルジ体で認識し、KDEL受容体を介し、これらクライアントを小胞体へ逆輸送する。過去の研究から、オルガネラ間のpH勾配を利用してERp44とクライアントとの相互作用が制御されていることを明らかにした(Watanabe et al., PNAS, 2017)。また亜鉛イオンによってERp44とクライアントとの複合体形成がより促進されることや細胞内局在が制御されていることを解明した(Watanabe et al., Nature comm., 2019)。小胞体においてERp44-クライアント複合体は、PDIファミリータンパク質によってERp44とクライアント間のジスルフィド結合が還元され解離すると考えられてきたが、その詳細な機構は分かっていない。 本研究では、亜鉛を介したERp44とEro1αとの複合体について、種々の条件下における複合体の解離をゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)によって解析した。従来の予想と異なり、PDIファミリーによる複合体中の分子間ジスルフィド結合の還元は確認できなかった。また還元剤によって分子間ジスルフィド結合を完全に還元した場合も, SEC上で複合体は保たれていた。興味深いことに、複合体を亜鉛キレート剤であるTPENと反応させた結果,SEC上で複合体は解離し単量体として溶出した。つまり複合体から亜鉛をキレートすることが複合体の解離には必須であることが分かった. また細胞内ではグルタチオンが複合体に対する弱い亜鉛キレートとして機能することが示唆された。