[3P-56] Residue specific NMR analysis of alpha-spectrin SH3 domain
一般的に蛋白質の構造変化には高い共同性(cooperativity)が存在すると信じられており、NMRを使ってアミノ酸残基毎に平衡定数や交換速度定数を決定しても、それらは単一の値をとると考えられる。グラム陽性球菌S. warneri 由来抗菌性ペプチドnukacin ISK-1の1 H- 15 N HSQCを測定すると2セットのクロスピークが存在する。HSQCとEXSYから二状態間の平衡定数と交換速度定数を求めると、アミノ酸残基ごとに大きく異なり、共同性が低いことが分かった。また、平衡定数と交換速度定数の両対数プロットは直線関係を示した。横軸と縦軸のそれぞれは二状態の自由エネルギー差と、遷移状態と各状態の自由エネルギー差に対応し、直線関係は残基毎の自由エネルギー直線関係と言える。これは、構造変換がスムーズに進むための性質を反映しており、郷モデルにおけるコンシステンシー原理を実験的に支持していると考えられる。Nukacin ISK-1にはモノスルフィド結合が3つあり、2つの状態の構造も似ているため、上記の関係は特殊なケースの可能性もある。そこで、単純タンパク質のフォールディングにおいても同様の直線関係を示すことを検証するために、α-spectrinのSH3ドメインを使ってNMR実験を行った。その結果、SH3ドメインのフォールディングにおいても共同性は完全ではなく、残基毎の自由エネルギー直線関係が成立していた。このことから、残基毎の自由エネルギー直線関係は一般的なタンパク質のフォールディングにも成立していることを想定している。