第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-2] ポスター3(3P-48ー3P-87)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場2

[3P-61] インスリンアミロイド線維の種間クロスシーディングに見られる構造の変化

柚 佳祐1, 山本 直樹2, 野地 真広3,4, 宗 正智3, 後藤 祐児3,5, 岩崎 哲史6, 鍔木 基成1, 茶谷 絵理1 (1.神戸大・院理, 2.自治医大・医, 3.大阪大・蛋白研, 4.京大・院人間環境, 5.大阪大・国際医工情報センター, 6.神戸大・バイオシグナル研究センター)

アミロイド線維は、アミロイドーシスや神経変性疾患に関与する針状のタンパク質集合体である。アミロイド線維には構造伝播能があり、線維断片をシードとして反応溶液に添加すると、シードを鋳型とした線維伸長が速やかに進行する。これをシーディング反応と呼ぶが、このときどの程度厳密にシード構造が保存されるのかについての詳細は明らかにされていない。そこで本研究では、ウシとヒト由来の二種類のインスリン線維を用いてセルフシーディングとクロスシーディングを行い、生成するアミロイド線維の構造保存または変化を解析した。
ウシとヒト由来のインスリンは、配列の違いが僅か3残基のみにも関わらず、異なるアミロイド構造を形成した。構造の違いは、ヨウ素染色による呈色反応によって最も明確に識別できたため、これをおもな解析手段として、セルフシーディングあるいはクロスシーディングを行い、線維の構造を解析した。その結果、セルフシーディングではアミロイド構造が強固に複製されるが、異種インスリン間でのクロスシーディングでは、徐々に変化し、場合によっては新種のアミロイド構造が形成することが分かった。構造変化の詳細を特異値分解により解析すると、構造変化の際に、中間状態としていくつかの線維構造を段階的に経由していた。このことから、アミロイド線維形成のエネルギー地形が凹凸に富み、クロスシーディングでは線維構造が別の構造へと転移しやすいことが示唆された。