[3P-68] Role of prion domain in liquid-liquid phase separation of Sup35
細胞内では液-液相分離によって形成される多数の液滴が、形成・解離を繰り返しており、一連の酵素反応の制御や、特定の生体分子の保護等の様々な役割を担っている事が明らかになってきた。長時間にわたる液滴状態の維持は、構成分子の異常凝集に繋がる可能性が高いため、細胞内液滴は環境の変化に鋭敏に応答し、素早く形成・解離する事が重要である。しかしその鋭敏な環境応答性のメカニズムはほとんど明らかになっていない。我々は、環境応答性を担うアミノ酸領域の特定、及び環境応答性メカニズムの解明は、今後の創薬や応用研究の重要な知見となると考え、酵母の翻訳終止因子Sup35のN末端天然変性領域Sup35NMを用いてその解明に着手した。Sup35は細胞内液-液相分離が観察されている蛋白質の1つであり、飢餓環境におかれた酵母内で液滴を形成する。試験管内ではSup35NMのみで液滴を形成する事が分かっている。我々はSup35NMの液滴が低温条件で形成し、高温条件で解離する事を発見し、その温度感受性に着目する事とした。Sup35NMは2種の低複雑性配列(N及びMドメイン)で構成されるため、先ずはこの領域の切断を試みた。結果、両者は単独で液滴形成が可能であったが、高い温度感受性を示すのはNドメインのみであり、Mドメインは高温条件でも液滴の消失が見られなかった。そこでNドメインをさらに3つに細分化したところ、その一つに高い温度感受性が確認でき、温度感受性に関与する領域を特定する事ができた。