[3P-69] Observation of invisible hydrogen bond with water molecule by 15N chemical shift
タンパク質は水溶液中でその機能を果たす。分子量数十万に及ぶ水溶性タンパク質でも、溶媒である個々の水分子とのローカルな相互作用は、分子の安定性や溶解度に大きな影響を及ぼし、時には疾病の原因にもなる。しかし、水溶液中の水分子が、タンパク質分子のどの部位とどの程度近い相互作用をしているかを個別に観察する手法は確立されているとは言い難い。水分子の酸素と、タンパク質分子の水素の間の相互作用は、X線結晶構造解析で観測された水和水の酸素の位置から見積もることはできるが、水分子の水素とタンパク質分子の酸素の相互作用については、X線結晶構造解析データを使って検証することは難しい。分解能のよい中性子結晶構造解析なら可能な場合もあるが、数少ない、条件の揃ったタンパク質についてしか実験データが得られずにいるのが現状である。一方、NMRは水素を観測できる有力な観測手法である。なかでも1H-15N HSQCは、タンパク質のNMRで最も一般的な測定法の1つである。立体構造をとったタンパク質では1H-15N HSQCのピークが広い範囲で観測されるが、これは、主鎖アミドプロトンとアミド窒素周辺の環境が個々に大きく異なっていることを示す。我々は緑色蛍光タンパク質(GFP)のループ部分の負電荷をもつアミノ酸に着目し、部位特異的アミノ酸置換を行うことで、主鎖近傍のローカルな静電ポテンシャルの変化が、主鎖カルボニル酸素との水素結合の変化を介してアミド窒素のケミカルシフトに及ぼす影響を調べた。