第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

シンポジウム

[S] 蛋白質科学が社会へ与えるインパクト:AMED-BINDSから次のステージへ

2021年6月16日(水) 09:45 〜 12:15 チャンネル1

オーガナイザー:津本 浩平(東京大学)、中村 春木(大阪大学)

共催:AMED-BINDS

09:50 〜 10:10

[S-2] ADMETox関連タンパク質の構造解析に関する産学官連携

村田 武士 (千葉大・理・化)

AMED-BINDSの一環として、令和元年度から創薬に重要な薬物動態/毒性(ADME/Tox)に関連する膜タンパク質のクライオ電顕構造解析を推進する産学官連携研究が開始した。本連携研究の標的分子として、毒性関連標的に電位依存性カリウムチャネル(hERG)、動態関連標的にP糖タンパク質(P-gp)が選出された。HEK細胞発現システムにより、標的分子の大量発現系を確立し、独自に開発したHisタグ抗体カラムを用いたワンステップ精製法により両膜タンパク質の大量精製に成功した。そしてKEK(BINDS E1拠点)が保有するクライオ電子顕微鏡(Talos Arctica)を用いて単粒子解析を行い、立体構造を決定した。現在、より高分解能の立体構造を得るために東大(BINDS E2拠点)が保有するハイエンドなクライオ電子顕微鏡(Titan Krios G3)を用いて構造解析を進めている。
今回、産官学が協力し、多くの製薬会社が共通して取り扱っている標的タンパク質に対し、クライオ電子顕微鏡を用いることで比較的短期間のうちに立体構造を決定することができた。BINDSの枠組みを利用することで、個社では取り組みにくかった課題に効率的に取り組めることを示すとともに、クライオ電子顕微鏡解析の創薬基盤技術としての有用性を示すことができた。