第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

シンポジウム

[S] 蛋白質科学が社会へ与えるインパクト:AMED-BINDSから次のステージへ

2021年6月16日(水) 09:45 〜 12:15 チャンネル1

オーガナイザー:津本 浩平(東京大学)、中村 春木(大阪大学)

共催:AMED-BINDS

10:10 〜 10:30

[S-3] LassoGraft Technology による新規バイオ医薬品モダリティの創成

高木 淳一1, 菅 裕明2 (1.阪大・蛋白研, 2.東大・理・化学)

抗体をはじめとするいわゆるバイオ医薬品(Biologics)は、その高い標的選択性と生体適合性のために、伝統的な低分子医薬品とは異なる優れた「モダリティ(医薬分子形態)」として急速にそのシェアを伸ばしている。とくに近年、タンパク質工学の粋を集めた人工抗体の開発や、2つ以上の標的に結合する「多重特異性抗体」の導入など、より高度で複雑なバイオ医薬品の開発が加熱している。一方でこれらバイオ医薬品の開発コストはさらに上がり、また天然の抗体からかけ離れたデザインによりその生産コストも上昇の一途をたどっており、しかもほとんどのケースで欧米で開発された基幹技術を導入するために我が国独自の医薬品開発が困難な状況が続いている。このような状況を打破するために、BINDS事業の高度化研究を通して、我々はペプチド創薬とタンパク質工学を融合する新技術、LassoGraft Technologyを開発した。この技術は、RaPID(Random Peptide Integrated Discovery)法により超迅速に得られる標的結合性環状ペプチドを生体親和性と生産性の優れたタンパク質に融合し、結果として「天然に近い形のタンパク質でありながら望みの標的結合性を有する新規分子」の創成を可能にするものである。融合パートナーとしては尿や血液中に存在する分泌タンパク質を始め、極めて多様なタンパク質が利用でき、また組み込んだ活性部位は元の環状ペプチドと同じ標的結合性を保持している。この技術を既存の抗体に応用すれば、タンパク質工学の知識が無くても一瞬のうちに多重特異性抗体を作製することが可能であり、また受容体アンタゴニストやアゴニストの創成も可能である。さらに、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドに応用することで、遺伝子治療ベクターの革新的改良も可能になる。我々はこの一群のchemically and structurally inspired biomoleculesが新世代のバイオ医薬品モダリティになり得ると考え、“ネオバイオロジクス(neobiologics)”と名付けた。