The 21st Annual Meeting of the Protein Science Society of Japan

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Symposium

[S] Impact of Protein Science to the Community: AMED-BINDS and beyond

Wed. Jun 16, 2021 9:45 AM - 12:15 PM Channel 1

Organizers: Kohei Tsumoto (The Univ. of Tokyo), Haruki Nakamura (Osaka Univ.)

共催:AMED-BINDS

11:10 AM - 11:30 AM

[S-6] Multiomics analysis of microtissues and single-cells

Haruko Takeyama1,2,3,4, Hiroko Matsunaga3, Miki Yamazaki1,3 (1.Grad. Sch. Adv. Sci. Eng., Waseda Univ., 2.CBBD-OIL, AIST-Waseda Univ., 3.Res. Org. Nano Life Innov., Waseda Univ., 4.Inst. Adv. Res. Biosyst. Dynam., Waseda Res. Inst. Sci. Eng., Waseda Univ.)

次世代シーケンサーや質量分析機の技術革新により、シングルセルやシングルセルに準ずる極微量細胞からなる微小組織を出発材料とした、高感度なゲノムDNAやmRNA、タンパク質や代謝物といった様々なオミックス解析が可能になってきた。さらに、複数のオミックス手法を統合するマルチオミックス解析により、がん・免疫・発生など幅広い分野において動的メカニズムの包括的理解が進むことが期待されている。一方で、階層的生命情報をどのように統合していくかにはまだ多くの課題が残る。多細胞生物において、個々の細胞は独立して存在するのではなく、空間的な位置や周囲の環境の影響を強く受けながら維持されている。空間的に細胞の形態に多様性があるように、遺伝子発現や蛋白質発現にも空間的多様性、言い換えれば不均一性があり、それらが複雑に相互作用することで生物学的、生理学的な役割を果たしている。例えば、幹細胞がどのように分化して多様な組織型を生じさせるかは空間的な多様性が調節された結果である。多階層オミックスの理解には、空間的情報を1つのオミックス情報として融合させることが必須である。我々の研究室では、空間位置情報を伴った微小組織解析に取り組んできた。これは、概ね20~30細胞程度を包含する100μm径という極微小組織を顕微鏡下でナイフエッジ加工された採取針によりパンチングする技術により達成する*1,2。採取された組織片は個別の反応チューブに回収されるため、単一のオミックス解析はもちろんのこと、生体分子を分画することにより同一切片からのマルチオミクス解析も達成することができる。これまでに、アルツハイマーモデルマウスを用いアルツハイマー発症時に細胞の萎縮が見られる脳の海馬領域特異的な遺伝子発現解析や腫瘍組織におけるPD-1抗体療法の感受性の遺伝子発現解析による評価などへの適用を進めてきた。また、遺伝子発現とゲノムDNAの変異の同時検出や、遺伝子発現と発現制御の統合解析を目的としたオープンクロマチン解析にも着手している。さらに、トランスクリプトームとプロテオームの同時解析の実現へと研究の対象を拡大している。mRNAとタンパク質の発現レベルの変化はお互いに一定の法則ではないが協調して変化していっていると考えられる。正に相関し変動するものがある一方で、神経細胞のように極性が高い細胞では負の相関が観察されている。相互の動的相関関係を捉え、核酸情報から表現系へとつながる発現経路の可視化を実現するには、空間的情報に加え複数のタイムポイントで共存するmRNAとタンパク質を包括的に理解することが有効である。我々の持つシンプルであるが汎用性の高いパンチング技術を適用した、空間的マルチオミクス解析における現状を紹介、その課題についても報告する。*1 Yoda et al. Sci. Rep. 7, 4325 (2017)*2 Yamazaki et al. Sci. Rep. 1, 7083 (2020)