第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS1] 分子夾雑の蛋白質科学における新展開

2021年6月16日(水) 18:00 〜 20:30 チャンネル1

オーガナイザー:浜地 格(京都大学)、王子田 彰夫(九州大学)

共催:新学術領域 分子夾雑の生命化学

20:05 〜 20:30

[WS1-06] 分子夾雑環境が変調するタンパク質の構造と機能

西田 紀貴 (千葉大・院薬)

X線結晶構造解析やNMR法により決定されたタンパク質の立体構造情報は、そのタンパク質の機能解明に大きく貢献をしてきた。一方で実際のタンパク質が機能する細胞内は様々な分子が高濃度で存在する分子夾雑系であり、細胞内におけるタンパク質の構造や機能はin vitro条件下とは必ずしも同一ではなく、分子夾雑による様々な変調を受ける。我々は生きた細胞中でのタンパク質の構造状態やその経時変化をリアルタイムに観測するin-cell NMR法の開発を行ってきた。本発表では、代表的な低分子量GTPaseであるRasについて細胞内での活性をin-cell NMR計測した例を紹介する。Rasの活性化の指標であるGTP結合型割合は、RasのGTP加水分解速度定数(khy)およびGDP-GTP交換速度定数(kex)によって決定される。In-cell NMR観測の結果、野生型Rasや発ガン性変異体のGTP結合型割合は、in vitroと比較して細胞内のほうが低下していた。この要因として、細胞内では分子拡散速度の低下によってkexが低下すること、また細胞内内在性タンパク質によりkhyが上昇していることが明らかとなり、分子夾雑環境がタンパク質の活性を変調させることが示された。