第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS2] 生命金属科学の最前線:生命における金属のはたらき

2021年6月16日(水) 18:00 〜 20:30 チャンネル2

オーガナイザー:天貝 佑太(東北大学)、横山 武司(東北大学)

共催:新学術領域 生命金属科学

19:30 〜 19:45

[WS2-07] 細胞内で金属イオンを失ったSOD1タンパク質が辿る運命

古川 良明 (慶應・理工・化学)

金属イオンとタンパク質の結合・解離は、生体内において極めて秩序良く進行し、その破綻が多くの疾患を発症させる要因となっていることが明らかとなりつつある。代表的な金属タンパク質の一つである銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は、銅・亜鉛イオンを結合することによって成熟化する酵素で、活性酸素であるスーパーオキシドの不均化を促進する。一方で、金属イオン結合のプロセスが不全になると、酵素活性が発揮されないだけでなく、SOD1のタンパク質構造が異常化することも知られている。特に、一部の筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、金属イオンが解離したアポ型のSOD1が検出されており、神経変性に関わる毒性発現への関与が指摘されている。よって、生体内に生じたアポ型SOD1への金属イオン再結合を促進することができれば、ALSにおける神経変性を抑制できるのではないかと提案されている。しかし、アポ型となったSOD1が金属イオンを再び獲得して正常化しうるのかは明らかでない。そこで私たちは、活性型SOD1から金属イオンを解離させたアポ型SOD1を調製し、細胞内環境を模倣した条件においてSOD1の再活性化について検討したものの、アポ型SOD1は金属イオンを獲得できず、活性化しないことを見出した。本発表では、アポ型SOD1を再活性化させるために必要となる条件について報告し、生命金属動態の破綻がもたらすALSの発症機序について議論する予定である。