第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS3] 蛋白質科学会アーカイブWS:蛋白質を多角的に捉えるNMR新技術

2021年6月16日(水) 18:00 〜 20:30 チャンネル3

オーガナイザー:森本 大智(京都大学)、松田 知己(大阪大学)

19:39 〜 20:03

[WS3-05] Rheo-NMRによるタンパク質のアミロイド線維化過程のリアルタイム計測

岩川 直都1, Erik Walinda2, 森本 大智1, 菅瀬 謙治1 (1.京大・工, 2.京大・医)

生体内には血流など生命活動の維持に必要な流れが存在する。従来、この流れは単なる物質の輸送とみなされているが、流体力学の観点からすると、狭い空間に流れがあると剪断力と呼ばれる物質を歪ませる力が生じる。そのため、生体内でも流れの中のタンパク質は力学的な摂動を受けていることが想像される。実際に、神経細胞内と同等の流れがタンパク質のアミロイド線維化を引き起こすことを示す報告もある。アミロイド線維の形成は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の発症と強い相関があるが、未だに何がタンパク質を積極的にアミロイド線維化させているのかは明らかでない。ここにおいて流れがどのようにアミロイド線維化に関わっているのかということに興味が持たれる。とはいえ、そもそも流れの中でタンパク質がどのように振る舞うのかがよく分かっていない。例えば、流れの中でタンパク質がどのように回転運動したり構造変化したりするだろうか?これらは生体内のどこにでもある現象に対するシンプルな問いであるが、意外にもこの問いに答えられる学問がない。このような現状は、一つに流れの中のタンパク質を原子レベルで解析できる適切な装置がないためと考えられる。そこで、私たちは試料内に流れを発生させながらNMR測定ができる高感度Rheo-NMR装置を製作し、同装置がタンパク質のアミロイド線維化過程のリアルタイム計測に適用した。本発表では装置と解析の詳細について紹介する。