第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS5] 高速分子動画:タンパク質の構造機能相関研究の最先端

2021年6月17日(木) 18:00 〜 20:30 チャンネル1

オーガナイザー:南後 恵理子(東北大学)、木村 哲就(神戸大学)

共催:新学術領域 高速分子動画

18:51 〜 19:14

[WS5-03] 光エネルギーを使って内向きにプロトンを輸送するロドプシンの構造とダイナミクス

井上 圭一 (東大・物性研)

微生物ロドプシンは発色団にall-trans型のレチナールを持つ、7回膜貫通型の光受容タンパク質ファミリーである。微生物ロドプシンの特徴として、これらのコンパクトな共通構造から、多様な機能を発現する分子が存在することが挙げられる。そのうち外向きH+ポンプやNa+ポンプ、陽イオンチャネルなどはシリアルフェムトセカンド結晶回折法(SFX)によって、レチナールの異性化から機能発現に至るまでの三次元構造変化ダイナミクス研究が報告されている。
一方で近年のゲノム・メタゲノム解析の進展により、新奇な機能や性質を持つ微生物ロドプシンが次々と報告されている。その中で我々は2つの独立したグループのロドプシンが、光エネルギーを使って細胞内側へH+を輸送する内向きH+ポンプ機能を持つことを見出した。これまでロドプシンの行うH+輸送はATP合成のためのプロトン駆動力(PMF)を生み出す外向きH+ポンプに限られると考えられていたため、これらの発見はロドプシンの常識に反するものであった。講演では内向きH+型ロドプシンと、従来の外向き+ポンプロドプシンを比較することで、レチナールの光異性化という共通の初期イベントから、どの様にイオンの輸送方向が切り替わるのかそのメカニズムについて紹介する。