第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS5] 高速分子動画:タンパク質の構造機能相関研究の最先端

2021年6月17日(木) 18:00 〜 20:30 チャンネル1

オーガナイザー:南後 恵理子(東北大学)、木村 哲就(神戸大学)

共催:新学術領域 高速分子動画

19:37 〜 20:00

[WS5-5(2P-22)] ミトコンドリアタンパク質挿入装置の構造基盤

竹田 弘法1,2, 包 明久3, 吉川 雅英3, 遠藤 斗志也1 (1.京産大・生命, 2.理化学研究所 BDR, 3.東大・医)

ミトコンドリアはATP産生・アポトーシス・代謝に重要な、真核生物にとって必須の細胞小器官である。ミトコンドリア内外における物質の輸送は、ミトコンドリア外膜に局在するβバレル型膜タンパク質によって駆動される。これらのβバレル膜タンパク質を、βバレルになるように整形させながらミトコンドリア外膜へ挿入するのがSorting and assembly machinery (SAM)複合体である。しかし、SAM複合体がどのようにして基質の膜挿入を触媒するのかは未だ不明である。今回の発表では、SAM 複合体及びSAM-Mdm10超複合体の構造と、その構造に基づいた機能解析について報告する。我々は、クライオ電子顕微鏡を用いて、SAM複合体及びSAM-Mdm10超複合体の精密構造を決定することに成功した。SAM 複合体のクライオ構造において、可溶性タンパクSam35及びSam37はGST like foldを示し、サイトゾル側からβバレル型膜タンパク質Sam50ダイマーと結合していた。一方で、SAM-Mdm10超複合体では、Sam37に結合していたSam50がβバレル型膜タンパク質Mdm10に置換されていた。この結果から、Sam37と相互作用する膜内空間は、Sam50、Mdm10、基質タンパク質が入れ替わるプレースホルダーとして機能していることを明らかにした。本研究では、SAM 複合体 を中心としたダイナミックなβバレルスイッチ機構を提唱し、SAM複合体による基質膜挿入メカニズムを明らかにした。