第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS6] タンパク質の液液相分離―計測、制御、応用―

2021年6月17日(木) 18:00 〜 20:30 チャンネル2

オーガナイザー:鎌形 清人(東北大学)、亀田 倫史(産業技術総合研究所)

19:05 〜 19:25

[WS6-04] 液滴によるL-乳酸酸化酵素の活性化

浦 朋人1,2, 香川 亜子2, 八木 宏昌2, 栃尾 尚哉2, 木川 隆則2, 美川 務2, 白木 賢太郎1 (1.筑波大院・数理, 2.理研, BDR)

近年、細胞内反応を区画化する機構として、液-液相分離により形成する液滴が注目されている。酵素反応の活性化において、液滴の主な役割は、酵素や基質を局所的に濃縮することだと考えられている。つまり、液滴内では酵素と基質の衝突確率が増加し、KM値が低下すると考えられている。我々は、L-乳酸オキシダーゼ(LOX)について液滴内での酵素反応の活性化の新たなメカニズムを報告する。まず、ポリ-L-リジン(PLL)の存在下では、静電相互作用で安定化された、直径数百nmから数十μmのLOX液滴が形成した。さらに、液滴中のLOXは、KMが約1/4に減少し、kcatが約10倍に増加することで、大幅に活性化した。我々の知る限り、液滴形成によってkcatが増加する最初の報告である。また、遠紫外CDスペクトルの測定によって、LOXの二次構造が液滴内で変化することが示唆された。液滴内部における混み合い効果や非極性の特殊な溶液環境が、LOXの活性部位のコンフォメーション変化を引き起こした可能性がある。以上の結果は、液滴は分子を濃縮することに加えて、内部で酵素の構造変化を誘起するという酵素反応における液滴の新しい役割を示唆する。本発表では、液滴中のLOXの活性化とその生物学的意味および産業応用について詳しく述べる予定である。