第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS6] タンパク質の液液相分離―計測、制御、応用―

2021年6月17日(木) 18:00 〜 20:30 チャンネル2

オーガナイザー:鎌形 清人(東北大学)、亀田 倫史(産業技術総合研究所)

20:05 〜 20:25

[WS6-07] MDシミュレーションと機械学習を組み合わせたペプチド凝集傾向予測

来見田 遥一1, 小林 海渡1, 齋藤 裕1,2,3, 中道 優介4, 池田 恵介5, 亀田 倫史1 (1.産総研・人工知能, 2.産総研・早稲田OIL, 3.東大院・新領域, 4.産総研・機能化学, 5.富山大・薬)

発表者は、分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、ペプチドがアミロイド形成する過程を研究しており、MDは精度よくアミロイド・凝集形成過程を再現できることがわかってきた。本研究では、4アミノ酸特定配列ペプチドの凝集形成能だけでなく、4アミノ酸ペプチドがとりうる全配列(204=16万通り)の凝集能を明らかにしたので報告する。
現代の計算機能力の発展は目覚ましいものがあるが、それでも多数ペプチドを含めた系のMDには、かなりの計算機資源が必要となる。しかも、その計算を16万回実施することは不可能である。このような計算の実施時には、アミノ酸を少数の球で表現する粗視化モデルを用い、粒子数を削減し高速化を図ることが多い。しかし、凝集形成過程には、ππスタッキングなど、表現するために詳細な分子構造が必要な相互作用が、重要であることがわかっている。
そこで、粗視化モデルを用いずに、全原子モデルMDと機械学習とを組み合わせることで、MD実施数を削減し、結果として高速化を試みた。具体的には、319配列のMDを実施、計算結果を学習データとする機械学習を行い、16万配列の凝集形成能を予測した。予測結果の妥当性を検証するため、形成能が高かったペプチドを実験で調べたところ、自発的に結晶化するなど高いβ構造形成能を示すことを確認した。またX線結晶解析でその立体構造を解明し、MDで得られた構造と比較すると、非常によく似ていた。最後に、これらの結果から液液相分離のMD研究についての展望を述べる。