第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS8] 発動分子科学:生体分子モーターから、人工分子機械まで

2021年6月18日(金) 09:45 〜 12:15 チャンネル1

オーガナイザー:池口 満徳(横浜市立大学)、村田 武士(千葉大学)

共催:新学術領域 発動分子科学

10:19 〜 10:48

[WS8-02] タンパク質ブロックを組み合わせて新しい生物分子モーターをデザインする

古田 健也 (情報通信研究機構)

細胞の中では、多種類のモータータンパク質が働き、物質輸送と細胞運動を司っています。この20年間に、それらの多くの立体構造が明らかとなり、その動作機構を原子レベルで議論できるようになりました。生物分子モーターは典型的な分子機械であり、その入力と出力は非常にはっきりしています。しかし、その動作原理を理解するには至っていません。私たちは、あえて天然にはない新しい機能や性質をもったモータータンパク質を「つくる」ことにより、生物分子モーターに共通する動作原理を明らかにしたいと考えています。また、私たちは最近DNAナノ構造体をレールとする新しい分子モーターの設計を行い、これを実現しました。このプロジェクトは、従来、比較的静的であったDNAナノテクノロジーを、動的で何か面白いもの、役に立つものへと変える野心的な試みと言えます。この中で私たちは、特異的なDNA配列を認識するような複数のお互いに「直交な」分子モーターを開発しました。この直交性と、分子モーターの運動方向がプログラムされた分岐構造を持つDNAレールにより、複数種類の分子を濃縮、ソーティングしたり統合したりすることに成功しました。今後の展望として、私たちはこれらを用いて、環境から情報を受け取り、分子計算や情報の縮退を行い、その結果を「動き」によって出力するような小さなロボットを作りたいと考え、そのステップを一つ一つ進めています。ボトムアップな新しい合成生物学的アプローチをご紹介できればと思います。