サイエンスキャッスル2018

講演情報

九州大会 » 口頭発表

[SS103] 口頭発表 O-1〜O-6

2018年12月16日(日) 10:05 〜 11:35 口頭発表会場 (2F ホール)

[O-5] ヤクシマエゾゼミはなぜそこにいるのか?

宮下智貴, 末吉耕晨, 吉田美優, 米倉咲良 (鹿児島県立国分高等学校 サイエンス部)

キーワード:ヤクシマエゾゼミ、カルデラ噴火、DNA解析、系統樹、Lyristes、生物地理

<概要>
屋久島固有種のヤクシマエゾゼミはエゾゼミに近縁であることが示されている(曽田2016)が,九州中南部にはエゾゼミは分布しておらず,この2種の分布は350kmもかけ離れている。

形態解析の結果,ヤクシマエゾは腹弁の形と色がエゾに近く,また独自のDNA解析でもヤクシマエゾはエゾに最も近縁であることが分かった。九州南部には,巨大噴火を起こしたカルデラが多く存在しており,その分布はエゾゼミ類の分布空白と見事に重なる。私たちは九州の巨大噴火によってエゾの生息域が分断されて隔離が生じ,屋久島に取り残された個体群がヤクシマエゾに種分化したと考えた(260字)
<考察・展望>
九州でカルデラ形成を伴う巨大噴火が相次いだことによって,エゾゼミ類は壊滅的な打撃を受けてきたと思われる。エゾゼミ類が分布していてもおかしくない霧島山系を擁する九州南部におけるエゾゼミ類の分布欠落は,噴火によるエゾゼミ類の絶滅を示していると考える。それにより,かつて屋久島まで分布していたエゾは生息域を分断され,屋久島に取り残された個体群が約30万年前にヤクシマエゾに種分化したと考えている。また,エゾが北海道の十勝地方より東に分布していないのは,屈斜路カルデラの噴火が影響していると考えられる。(246字)