第32回東北作業療法学会

シンポジウム

東北の30年の作業療法活動とこれからの展望
座 長
作業療法士
小山内 隆生
(弘前大学大学院保健学研究科)
1965年に、作業療法士が誕生してから55年が経過しました。第1回の国家試験合格者は17名であったと聞いています。全国の作業療法士数は、私が作業療法士になった1983年に誕生した作業療法士数は190人であり全国では累計1500人でした。それが38年後の2021年には104286名となっています。現在までの38年間で、養成校は23校から198校と8倍強になり入学定員は460名から7820名と17倍になりました。この背景には、高齢化社会の進行に伴って、高齢者に対するリハビリテーションの需要の高まりがありました。これによる、リハビリテーションの専門職である作業療法士の需要の高まりを背景に養成校が新設され、現在のようになりました。
作業療法士の数の増加は、作業療法の知名度を上げ、社会からの期待も大きくなっています。その一方で、労働年齢人口の減少に伴う作業療法の担い手の減少、国民医療費の高騰、専門職団体である日本作業療法士協会の組織率の低下等、作業療法発展の障害になる要因が見受けられるようになりました。これから我々が作業療法の専門性を維持し続けるためには、我々自身が能動性の維持に積極的に関わっていく必要があります。 そこで、今学会では、香山明美氏、原長也氏、松田均氏の3名には東北地方における精神障害分野、身体障害分野、発達障害分野におけるそれぞれの活動を振り返ってもらい、東北地方において作業療法がどのような経緯をたどり発展してきたのか、先人たちはどのような活動をしてきたのかを振り返り、今後の発展に必要なことは何かということについて意見交換を行う機会にしたいと考えています。
精神障害領域の作業療法を振り返って
近年の精神科領域における作業療法の変遷とこれから
シンポジスト
作業療法士
香山 明美
(東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科)
2004年9月に「精神保健福祉の改革ビジョン」の中で「入院医療主体から、地域生活を中心したあり方への転換」が打ち出されて以来、精神医療・保健・福祉のあり方が大きく変化してきた。そのような流れの中で「長期入院者の退院促進」、「急性期からの退院支援」、「地域生活支援」へと作業療法士の役割も拡大してきた。これらを含むこの40年の精神科領域における作業療法を振り返り、更に「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」に資する作業療法士の役割を考えたい。
身体障害領域の作業療法を振り返って
機能訓練事業から介護予防事業への関わりの振り返り
シンポジスト
作業療法士
原 長也
(医療法人ときわ会 ときわ会病院)
1973年の老人保健法施行後、同法に基づく機能訓練事業が全国で行われてきました。私も当時その活動に携わり、県士会の地域リハビリテーション委員会活動の一環で当時の青森県内の実情を報告しました。また、2000年の介護保険施行時から介護支援専門員として居宅介護支援の業務に就き、居宅における介護予防の難しさに直面しました。これらのことを紹介し今後の課題について共に考える機会になれば幸いです。
発達障害領域の作業療法を振り返って
温故知新と心技体
シンポジスト
作業療法士
松田 均
(一般社団法人アクティビティいわて アクティブキッズ)
第32回東北作業療法学会のメインテーマ「温故知新」に乗じて「心・技・体」という時代を感じる古くて新しい内容をサブテーマにしました。作業療法における小児・発達障害のこれまでの流れを概観して、いま、求められるこどもOTの支援の在り方についてまとめようと思います。多くの諸先輩、ご活躍の先生方を差し置いて登壇するのは恐縮極まりないところですが、特にこどもに関わる領域に興味のあるOTへの示唆になれば幸いです。