第32回東北作業療法学会

アップデートセミナー②

排泄自立支援チームにおける作業療法士の役割
作業療法士
篠原 美穂
(杵築市立山香病院)
2016年に排尿自立指導料が保険収載されて以降、医療や介護の分野で排泄に関する多職種チームでの包括的ケアが評価されてきた。そこで、排尿ケアチームで求められる作業療法士として身に付けておくべきアセスメントを概観し、実際の介入例を紹介する。排便ケアチーム、訪問リハでの他職種連携にも触れる。包括的排尿ケアにおける作業療法士の役割を考え、各自の職場、組織での作業療法実践拡充の手がかりとなれば幸いである。
作業療法における上肢機能練習
作業療法士
竹林 崇
(大阪公立大学医学部リハビリテーション学科)
作業療法は「対象者が価値をおく活動(作業)の成就」を生業とする仕事であり、麻痺等を含む運動障害に対する機能練習も目標達成のツールとしての役割を求められる。本講義では、世界的にもエビデンスが確立されているロボット療法や物理療法によってもたらされた上肢機能の改善を、実生活における作業獲得に繋げるCI療法について、多角的に解説を行う。
OBP2.0スタートアップ講座
作業療法士
寺岡 睦
(吉備国際大学保健医療福祉学部作業療法学科)
OBP2.0は作業療法実践と多職種連携を円滑に進める理論である。この講座では、作業療法とは何か?、多職種連携はどのように行えばよいか?、などの疑問に答える。経験年数や領域を問わず作業機能障害と信念対立の理解を深め、明日からの現場で活用できるような内容である。作業療法を理解したい、研鑽を積みたい、事例報告をしたい、職場のマネジメントに役立てたいと考えている方はぜひ参加してほしい。
学校作業療法とは
届けたい教育を学校と家庭チームで叶える
作業療法士
仲間 知穂
(YUIMAWARU株式会社)
私達OTには「作業に焦点を当てる」という多職種にはない視点を持っています。これは、従来専門家が行ってきた「子どもの問題行動への対応」に対し、先生の「届けたい教育(先生の作業)」の実現に向け、学校と家庭がチームを組み、先生が力を持てるよう関わります。
届けたい教育を実現するという関わりは、家庭と学校が安心して協働的に子どもの成長を支えるチームづくりを可能にし、対象児童だけでなく、クラスに所属する子ども達にも影響を与えます。そのことはこれまで教育現場が願ってきたチームとしての連携、先生のエンパワメント、親の安心、平等な教育の機会の提供、子どもの可能性の拡大など効果をもたらしています。
今回、「届けたい教育をみんなに」をコンセプトにゆいまわるが行っている学校作業療法についてお伝えします。皆様と共有できることを楽しみにしております。
失行のメカニズムとリハビリテーション
作業療法士
能登 真一
(新潟医療福祉大学リハビリテーション学部作業療法学科)
失行はリープマンによってはじめて報告され、120余年が経った現在でも、そのメカニズムはおろか分類や定義も定まっていない症状である。一方で、失行はADLやIADLといった患者さんの日常生活に直接に影響を及ぼすため、作業療法士に与えられた責任は決して軽くない。そうであれば、われわれは何を理解し、どのようにアプローチしなければいけないのか。その論点が整理されるようにできるだけわかりやすくお伝えしたいと考えています。
高次脳機能障害領域における今後の作業療法の方向性について
医師
平山 和美
(山形県立保健医療大学作業療法学科)
高次脳機能障害の作業療法には、ご本人、周囲の人々、治療者が話し合い、仮説を立てテストする営みが大切である。起こっていることについて三者の理解が進むだけでも、対処行動に改善がみられる。高次脳機能では、同じ認識や行為につながる複数の脳機構が並行して働いていることが多い。個々の病態の理解に基づき、残された機構の利用、必要な刺激の増強、妨害的な刺激の低減などの工夫を行い、結果の情報を共有していくことが重要である。
がんリハビリテーションにおける作業療法の専門性
過去から学び、未来へ紡ぐ
作業療法士
三浦 裕幸
(弘前大学医学部附属病院)
二人に一人が「がん」に罹患すると言われてる昨今、重複障害として「がん」と診断された対象者に関わる機会が増えていくことが予想されます。がん治療が高度化となる一方、対象者のニーズは多様性に富み、作業療法に求められる知識と技術を常に更新することが求められています。そのため本講演では、作業療法が関わるがん医療を多角的に解説し、近年のトピックスと臨床実践についてご紹介することで、明日の臨床・教育の糧となることを目的としています。
ニューロリハビリテーションと生活機能障害
根拠に基づいたADLアプローチ方略
作業療法士
宮口 英樹
(広島大学大学院医系科学研究科)
本セミナーでは、以下の内容を目的とする。
  • 脳神経機能解剖学の基本的な構造を理解する。
  • 基本構造を踏まえた上で、ニューロリハビリテーションのアイデアを理解する。
  • ICFの構造を理解した上で事例を通じて臨床活用の方法を考えることが出来る。
  • スキル学習理論の基本的内容を理解する。
  • 脳内機序の構造を踏まえた上でADL介入を探り、ICFで根拠を示す手がかりとする。
  • スキル学習理論とニューロリハビリテーションのアイデアを臨床で生かす方法を考える。
脳の可塑性と機能回復
GABAは抑制性伝達物質?
生理学者
山田 順子
(弘前大学大学院保健学研究科)
脳内で最も主要な興奮性伝達物質グルタミン酸に対する抑制性伝達物質として知られるGABA(γアミノ酪酸)は発達初期や神経障害時にはCl-流出により膜電位を脱分極させて興奮性に作用し、細胞内Ca2+を増加させ神経細胞への分化、移動、シナプス形成・強化に関与することが近年注目されている。今回、脳のネットワーク調節機構およびモデル動物を用いた研究手法や運動の種類による回復効果の違いなどを紹介する。
臨床上肢機能アプローチ(肩甲帯~手)
脳卒中の理解から具体的介入
作業療法士
山本 伸一
(社会医療法人加納岩 山梨リハビリテーション病院)
2022年7月1日~31日、第32回東北作業療法学会が開催されます。誠におめでとうございます。このコロナ禍という苦境ではありますが、運営委員の皆様のご尽力ご努力によって盛大に催されますことを心よりお祝い申し上げます。
私は作業療法士になって30数年経ちます。作業療法士になった当時は、「脳卒中麻痺側上肢に介入するのか?しないのか?」の論争が真っ最中でした。当院では、そのような状況の中にあっても麻痺側上肢へ一生懸命に取り組んできました。なぜなら、患者の訴えだったからです。希望に応える「対象者ファースト」の実践も大切なことだと思います。今回は、脳卒中の障害像の理解から、肩甲帯から手についての具体的介入を提示したいと考えています。宜しくお願いいたします。