10:45 AM - 11:00 AM
[S01-05] An application of extended Kalman filter for ambient noise monitoring of seismic velocity changes
はじめに
地震・火山現象を理解する上で、地震波速度構造の時間変化を捉える事は重要である。地震や火山噴火に伴った応力変化や流体の移動は近傍の地下構造に大きな影響を与えるため、地震波速度構造の変化から応力状態や流体の分布などに制約を与えることが期待できるためである。実際に地下構造の時間変化を求めようとする場合、例えばコントロールソースを用いて繰り返し地震波速度構造推定を繰り返す事ができれば理想的である。しかし多くの場合現実的ではない。一方自然地震を使う場合、震源の不確定性や震源分布の偏りなどに起因する不確定性が、速度構造に大きな不確定性を引き起こす。そのため、たとえ時間変化が検出できたとしても、それはただのノイスズなのか本当の速度変化なのか判然としがたい。
地震波干渉法による解析を用いれば、一方の観測点を仮想的な震源とみなすことができるためこの問題を回避することが可能である。原理的には、2点で連続地震観測を行い、その雑微動記録の相互相関関数の変化を見続ければその2点間の局在化された地震波速度構造変化を時々刻々モニターすることができる。しかし、励起源の分布がランダムかつ一様と仮定できる必要がある。実際には励起源の時分布には偏りがあるため、見かけの時間変化を検出する可能性がある。この効果を低減するため、コーダ波干渉法 (e.g. Poupinet et al. 1984)が合わせて用いられることが多い。この手法では、抽出された相互相関関数のコーダ波部分は、励起源の偏りの影響を受けづらいという性質を利用している (e.g. Hadziioannou et al. 2009)。実際近年多くの、地震・火山噴火に伴う地震波速度構造変化が検出され、多くの観測例が蓄積されつつある (e.g. Sens-Schönfelder and Wegler 2006, Brenguier et al. 2008)。また観測された地震波速度構造の時間変化は地震・火山現象以外にも、降水量に伴う変化等表層付近の現象に強く影響されていることも分かってきた(e.g. Wang et al. 2017)。地震波速度構造の時間変化をモデリングし、かつ降水量等の影響を定量的に評価するためには、状態空間モデルが有効であると考えられる。そこで本研究では、拡張カルマンフィルターの適応を試みたので報告する。
解析手法
地震波速度構造の時間変化の測定にはストレッチング法(e.g. Sens‐Schönfelder and Wegler 2006)を用いた。ここでは、ある1つの観測点ペアに注目し、以下のような解析を行こなう。
(1) まず1日毎に相互相関関数φiを計算する。3成分x3成分、のペアで計算する。
(2) Seconday microseisms の周波数帯での解析を想定している。
(3) 全観測期間相互相関関数を平均化し、基準となる相互相関関数φ0(t)を計算する。
(4) 直達波付近は付近は励起源分布の時間変化の影響を受けやすいため、lag time 20-100秒程度のcoda波に注目する。
地震波速度構造の時間変化を一様に起こっていると仮定し、時刻iでの相互相関関数φi synth (t) = Ai φ0(t(1+αi)t)とかけるとする。(Ai - Ai-1 )と(αi-αi-1)が十分に小さいとしてテーラー展開すると、
φi synth (t) = (Ai-1 + (Ai-Ai-1))φ0(t(1+αi-1) + t(αi-αi-1)) ~φi-1synth (t)+ (Ai-Ai-1)φ0(t(1+αi-1))+Ai-1 φ0,t(t(1+αi-1)) t(αi-αi-1)
と書くことができる。ここでφ0,t はφ0 の時間微分を表す。
Aiとαiを状態変数、φiを観測値とみなすことで、線形化した観測方程式を構成することができる。状態方程式として1次のトレンドモデルを仮定し、拡張カルマンフィルターを構成した。事前確率として観測データの共分散行列、状態擾乱項の共分散行列とモデルの共分散行列を仮定する必要がある。また、計算の高速化のため、予め基準となる相互相関関数φ0の時間微分値(dnφ0/dtn)を5次まで計算しておき、各時刻ステップでφ0(t(1+αi-1))をテーラー展開から計算した。
予察的な解析結果によると、通常のストレッチング解析と整合的な結果が得られた。状態空間モデルの利点として、(1)欠測値を自然に取り扱うことができる、(2)降水量の影響等、他の地球物理学的観測量を柔軟に取り入れることが可能な点が挙げられる。今後、降水量の効果を適切にモデリングし、地震・火山起源のシグナルと分離する手法を開発する予定である。
地震・火山現象を理解する上で、地震波速度構造の時間変化を捉える事は重要である。地震や火山噴火に伴った応力変化や流体の移動は近傍の地下構造に大きな影響を与えるため、地震波速度構造の変化から応力状態や流体の分布などに制約を与えることが期待できるためである。実際に地下構造の時間変化を求めようとする場合、例えばコントロールソースを用いて繰り返し地震波速度構造推定を繰り返す事ができれば理想的である。しかし多くの場合現実的ではない。一方自然地震を使う場合、震源の不確定性や震源分布の偏りなどに起因する不確定性が、速度構造に大きな不確定性を引き起こす。そのため、たとえ時間変化が検出できたとしても、それはただのノイスズなのか本当の速度変化なのか判然としがたい。
地震波干渉法による解析を用いれば、一方の観測点を仮想的な震源とみなすことができるためこの問題を回避することが可能である。原理的には、2点で連続地震観測を行い、その雑微動記録の相互相関関数の変化を見続ければその2点間の局在化された地震波速度構造変化を時々刻々モニターすることができる。しかし、励起源の分布がランダムかつ一様と仮定できる必要がある。実際には励起源の時分布には偏りがあるため、見かけの時間変化を検出する可能性がある。この効果を低減するため、コーダ波干渉法 (e.g. Poupinet et al. 1984)が合わせて用いられることが多い。この手法では、抽出された相互相関関数のコーダ波部分は、励起源の偏りの影響を受けづらいという性質を利用している (e.g. Hadziioannou et al. 2009)。実際近年多くの、地震・火山噴火に伴う地震波速度構造変化が検出され、多くの観測例が蓄積されつつある (e.g. Sens-Schönfelder and Wegler 2006, Brenguier et al. 2008)。また観測された地震波速度構造の時間変化は地震・火山現象以外にも、降水量に伴う変化等表層付近の現象に強く影響されていることも分かってきた(e.g. Wang et al. 2017)。地震波速度構造の時間変化をモデリングし、かつ降水量等の影響を定量的に評価するためには、状態空間モデルが有効であると考えられる。そこで本研究では、拡張カルマンフィルターの適応を試みたので報告する。
解析手法
地震波速度構造の時間変化の測定にはストレッチング法(e.g. Sens‐Schönfelder and Wegler 2006)を用いた。ここでは、ある1つの観測点ペアに注目し、以下のような解析を行こなう。
(1) まず1日毎に相互相関関数φiを計算する。3成分x3成分、のペアで計算する。
(2) Seconday microseisms の周波数帯での解析を想定している。
(3) 全観測期間相互相関関数を平均化し、基準となる相互相関関数φ0(t)を計算する。
(4) 直達波付近は付近は励起源分布の時間変化の影響を受けやすいため、lag time 20-100秒程度のcoda波に注目する。
地震波速度構造の時間変化を一様に起こっていると仮定し、時刻iでの相互相関関数φi synth (t) = Ai φ0(t(1+αi)t)とかけるとする。(Ai - Ai-1 )と(αi-αi-1)が十分に小さいとしてテーラー展開すると、
φi synth (t) = (Ai-1 + (Ai-Ai-1))φ0(t(1+αi-1) + t(αi-αi-1)) ~φi-1synth (t)+ (Ai-Ai-1)φ0(t(1+αi-1))+Ai-1 φ0,t(t(1+αi-1)) t(αi-αi-1)
と書くことができる。ここでφ0,t はφ0 の時間微分を表す。
Aiとαiを状態変数、φiを観測値とみなすことで、線形化した観測方程式を構成することができる。状態方程式として1次のトレンドモデルを仮定し、拡張カルマンフィルターを構成した。事前確率として観測データの共分散行列、状態擾乱項の共分散行列とモデルの共分散行列を仮定する必要がある。また、計算の高速化のため、予め基準となる相互相関関数φ0の時間微分値(dnφ0/dtn)を5次まで計算しておき、各時刻ステップでφ0(t(1+αi-1))をテーラー展開から計算した。
予察的な解析結果によると、通常のストレッチング解析と整合的な結果が得られた。状態空間モデルの利点として、(1)欠測値を自然に取り扱うことができる、(2)降水量の影響等、他の地球物理学的観測量を柔軟に取り入れることが可能な点が挙げられる。今後、降水量の効果を適切にモデリングし、地震・火山起源のシグナルと分離する手法を開発する予定である。